セイギの声が消えるころ

□世界が消える夢を見た
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世界は苦痛に満ち溢れている。
醜いものが沢山あるし、それこそ裏切りなんて日常茶飯事だ。

コイツはそれを当然だと笑う。
綺麗なまま生きてはいけないんだと。
汚れることで大人になる。
理想論なんか口に出さなくなる。


犠牲が必要だ。
どんな行為にも相応の。


「急にどうしたんだ?アッシュ」

あんな事があった後なのに、コイツは……ガイは何時も通り笑ったままだ。
それが安心で、怖くて。
昔みたいに抱き締めて欲しくなった。



「全く……お前は子供かー?」

そう言いながらガイは乱暴にアッシュの頭を撫でる。
そこに敵意はなく、あるのは計り知れない程の優しさだけ。
昔屋敷に居た時に感じていた幸福が此処にあった。

幸せだ。こんなにも。
あんなに望んだガイが俺だけを見てくれている。
レプリカじゃなくて、ヴァンでもなくて、俺を。


「愛してるよ、アッシュ……お前を誰よりも」

鮮やかな笑顔。強く抱き締める。
昔と違うのはこの位だな、とアッシュはぼんやりと考えた。

そうだ、他には何も変わっていない。
ずっと幸せなんだ。ガイが傍に居るんだから。


例えこれが背徳と呼ばれようと、世界が壊れようと関係ない。
俺とガイが生きていればそれで良い。

悪魔の手招きに、ただ乗った。
自分の幸せを求めて何が悪い?
元々幸せなんざ誰かの不幸がなけりゃ成立しない。



「綺麗だな」

「ああ、不必要なものはもう残ってないからな」

世界に二人だけ。
それで良い、それが幸せ。
唯一の、愛する人への美しい花束。

月の涙が落ちる。
大丈夫。もう独りで空を眺めて溜め息を吐いたり、何度も星を眺めることもない。

ガイを殺す夢も見ない。
それを正義だと思う必要もない。




誰かが選択しなかった未来。



積み重ねた死体の数。
大地はもう元の色を見ない。






誰も居ない世界で、二人は初めてキスをした。














end

ロイクラの斜陽の楽園と繋がってる…のか?
ロイドが選択しなかった未来=アッシュが選択した未来 みたいな。
どっちが幸せなんだろう(´・ω・`)

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