セイギの声が消えるころ

□祈り人は白き花の下に
1ページ/1ページ







亡き世の最愛へ捧ぐ。


















今日の風はやけに冷たい。
ピオニーはぼんやりとそれだけを考えていた。
流れ続ける水はいつもの澄んだ色ではなく、黒い。

この世界は不安定だ。
預言は消え、人々は平安を失ってしまった。
寄りどころが無い者はとても弱く愚かになる。



玉座に座り、近づく足跡に耳をすました。
その音から焦りが見える。
死を目前にした自分よりもそれは大きかった。


「陛下!」


その声が聞けただけで幸せ。
その瞳を見つめられただけで世界が救われて良かった。
ホドに降りかかった悪夢を見続ける遺児。
その成長を近くで見れただけで、もうこれ以上無いほど幸福であったのだと。



「この国は二度と過ちを繰り返さない、そうですよね?」

言わないでくれ。
それを言われたら、もうどうすることも出来ない。

ただお前の望みを叶えてやることしか出来なくなる。


「陛下は生きなくてはなりません、誰の命を犠牲にしてもです」

あなたはこの国そのもの。
それがあなたの責任。



「間もなく城に反乱軍が入ってくるでしょう、そうなったらいくら俺でも陛下を守り抜くことは不可能です。
ジェイドの旦那が陛下を外で待っていますから」


反乱が起きたのはつい2日前。
誰に唆されたのかは分からないが数が多すぎた。
美しい流れはもう闇色に変わり、もうかつての面影は見られない。

軍は地方で起きた反乱を鎮圧に出かけ、もう3日は帰らない。 知らせは届いているだろうが、すぐに戻っては来れなかった。



「俺は此処で敵を食い止めます、だから早く行って下さい。
そうじゃないと別れが辛いですから」

ガイは振り向かない。
あの微笑みを見ることはもう無いのだと思うと涙が止まらなかった。


「陛下、ホドはあなたを赦さない。
けれど俺は……ガイラルディアはあなたを心から愛しています」

ピオニーが目を見開き、彼の名を呼ぼうとした瞬間、もう其処に彼は居なかった。

静かに笑い、ゆっくりと歩く。
走馬灯と語らいながら。








その後、この国は、












無き未来の最愛へ祈る。














end





初ピオガイ!ガイがすれてない笑

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ