セイギの声が消えるころ

□ティアーズワーズ
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その言葉が聞けたらどれ程だろう。
だから私は消え入りそうな台詞を塞いだ。
美しい白が見える。白い月が支配する視線。
あたたかさを求めたつもりは無かったのだから、この世界はきっと望んだものであるのか。
それすらもう分からない分かる必要ももう無い。


呼吸を止めてしまいたかった。
その願いもすぐに叶えられそうで嬉しい。
ちらちらと視界に捉える真紅に雪が被さる。
私の言葉はもう外には響かない、だからこそ願える何かがまだ残っていると思いたかった。


「ほんっと天使様は馬鹿なんだから」

その蔑む瞳が好きだ。
その何とも思っていないと言い聞かせる声が好きだ。
好き好き好き、あいしてる。
けれどもそれは<不自然>だと分かっているから。
終止符はせめて己の手で下したかった。


「愛してる、消えてもずっとクラトスの心の中で生きてる」

景色に広がる血液はゼロスのもの。
私はただ眺めているだけ。
綺麗?否。ただ存在しているだけの赤。
ゼロスから離れてしまった時点でそれは何も価値の無いものに成り下がる。
ゼロスと言う魂が離れればこれはただの肉塊。
醜い、ただの人間。



欲しいものは、何だった?
愛しい彼の体?魂?優しい言葉?それは彼のもので無くても良かった?


「違う」

ただの赤が更に広がる。
発する言葉が空気に拡散して消えた。
誰に言い聞かせたかったのかそれすらもう忘れた振りをする。














「クラトスは何だかんだ弱いから俺が死んだらおかしくなりそうで不安だぜ〜」

「お願いだから、笑っていて」

「そこに幻の俺しかいなくても良い」

「罪を重ねた俺には丁度良い末路なんだから」


それがもう消えてしまった彼の最期の願いだったから。
天使はそれを頑に守る。
また始まる物語。結末は決まっている。
それでも何度でも逆戻りさせて、隙間を埋めて。
どんな悲劇でも彼は隣で笑っていて、殺されるまで天使だけを愛しているのだから。





美しい世界。
神子の名前はゼロス、監視する天使の名前はクラトス。
二人は恋に落ちて、そしてまた廻る。
悲劇の結末まで一字一句違わない言葉で。



時計の針がまた同じ様に動き始めた。


















end




感覚でどうにか感じ取って頂ければ…。
ちなみに私もよく分からなくなってきてます。
狂気っぽいパパを書きたかった。

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