セイギの声が消えるころ

□01
1ページ/1ページ







「俺はそっちには居られないよ」



後ろ姿が焼き付いて離れない。
金糸が夕焼けに輝いて、もう戻れないのだと。
宵闇が世界を支配する頃。
綺麗すぎて手を伸ばすのを躊躇った頃。
とても澄み切った空気の片隅で俺は確かに聞いたんだ。















「挨拶は済んだの?」

仮面を外した少年は楽しそうに彼の頬を撫でる。
それは紛れも無い愛情。そして喜びに他ならなかった。
こちら側にやってきたならもう離さない。
アッシュも、ガイがこちらについたと知ったら大人しくなるだろう。

可哀想な子ども。可哀想なガイ。
だからこそ此処まで綺麗になったのかもしれない。
誘って止まない瞳はきっと彼が磨き上げた武器。
潤み、それでも絶対に堕ちない強い眼差し。
彼が生きるために売った春。それすら正当化できるほどの。



「ああ、ただいま」

目に入るのはかつて<仲間>と呼ばれた人たち。
絶望と困惑と色々なものが視線に含まれている。
嘘だと、冗談だと、縋りつく様な。


長い長い旅路だった様に思う。
様々なことを学んだ。
ルークを救ったりもした。でもそれは必要だったからだ。
今はもうそんなことは必要はない、だから要らない。




「笑えない冗談だと思っているんだろう?
残念ながら夢でも何でもない……なぁ?アッシュ」

後ろから現れたのは、ルークと同じ赤い髪をした男。

「ふん、屑はとことん屑だな」

アッシュは当然の様にガイの腰を抱く。
シンクは少しつまらなそうに、けれど楽しそうに五人を見やった。

きっと誰もがガイの今の姿を受け入れられない。
あんなに純粋そうに微笑んで、人のことを思いやって、それから、それから。
ガイのことを、ガイのことだけは、信じられると……。


ああ、声が聞こえてきそうだ。
笑いを抑えることは到底出来そうになかった。


「アッシュ!……また、わたくしの傍から居なくなるというのですか?」

ナタリアの悲痛な声が響く。
あれだけ彼女のことを気にかけていたのに、今の彼にはもう思慕の情も何も映らない。

「ガイが幸せならそれで良い、この意味……分かるだろう?」

お前を殺せと言われたなら、すぐにでも俺は剣を抜く。
射抜くそれは真実で、金色を遊ばせ青年はアッシュに顔を寄せる。
触れるだけの唇。けれどそれだけで絵になる姿。
誰も触れられない、薔薇の枯れる前の刹那の美しさ。


「アッシュ、お前は本当に良い子だよ。
もちろんシンクも」

娼婦の様で、それでも純潔を保っている奇跡の様な感覚。
雨がゆっくり降り始める。
照らしていた星すらも覆い隠す暗雲は、この物語の終焉を示していた。















next?





シンクとアッシュがとてつもなくブームです。
続きますが、一話一話で読める様な感じにします、多分…きっと多分…ガイはもう真っ黒が好きです、個人的に笑

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ