セイギの声が消えるころ

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全てが過ぎ去った後、ルークは呆然と其処に立っていた。
雨はまだ降り続く。けれどその方が良かった。
流れて止まらない涙を少しでも洗い流すことが出来るから。


「ルーク、いつまでも此処にいても仕方ないわ……ガイのことは、その、辛いのは分かるけど」

そっとティアが彼の肩に触れる。
それを強い力で振り払ったルークは、ただ強い憎悪を彼女に向けていた。

八つ当たり。分かってる。
けれどその言葉に首を縦に振るわけにはいかなかった。


「ガイがほんとに、裏切ったなら俺はもう生きてても仕方ない!
だから認める訳にはいかない……」

ガイのために強くなった。ガイが喜んでくれるから。
ガイのために生きていた。ガイが望んでくれるから。
あの微笑みを見ているだけで幸せだった。
だから、信じてはいけない、この現実を。
俺が生きていくためには。


ティアはただ俯いていた。
ルークを愛すが故に目を背けていたことがある。
ガイとの関係、親友だと思っていた。それ以上だと知っていたのに、知らない振りをしていた。
傷つくのが怖かったから。
もしも私が恐れずに愛を告げていたなら、少しはルークを救えていたのだろうか。
ガイの策略から、救えた?
ガイがルークの全てになる前に、癒すことが出来たと言うのだろうか?


「ルーク、あなたは……」

騙されていた、と今言って何になるんだろう。

敵を色香で誘うこと、それは常套手段だ。
敵の力を著しく削ぐころが出来る、愛情と言う鎖は一方的でも。
敵がそう言った罠を張り巡らせている可能性はあった。
けれど私は失念していたのだ。
仲間の中に、その罠が隠れているかもしれないことを。
そしてまさかガイが、そんなことをするなんて思わなかった。



「騙されていたんですよ、私たちはね」

ジェイドは事実だけを告げる。
それは痛みを伴うことで、彼も失意の底にいた。
ルークの体が大きく跳ねる。聞きたくないと首を振る。
それでも止める訳にはいかなかった。
世界のために、自分の咎を償うために、私は旅を続けなければいけない。
ヴァンを倒して、世界を、救う。それが正しい選択。

「ガイが敵になるのなら」

言いたくない、考えたくもない。あの哀れな子どもを、その美しい瞳を閉ざさなければいけないなんて。

「殺さなくてはいけない、分かるでしょう?」

吐き気を伴う現実。
どうして、誰に問えば良いのだろう。
誰に問うたところで望む答えが返ってくることはない。


彼はもう居ない。
残り香だけを頼りに、独り貴方を追うことは許されない。
ならばせめてこの手で、そう思うことは許される行為であって欲しい。


彼がこの手を振り払ったあの時から、この結末は分かっていたことなのだから。










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ティアはルークべた惚れーでもルークはガイにべた惚れ。ジェイドもガイ大好き。
切ないかも…

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