セイギの声が消えるころ

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あの瞳が苦手だ。
全てを見透かした様な、子供をあやす様な瞳。

女の子が苦手なのに一生懸命助けたり、頼んでもないのに世話を焼いたり。
馬鹿な人間、馬鹿な大人だと思った。


「アニスはまだまだ子供なんだよ、君の知らないことはいくらでもある」

「失礼な!アニスちゃんはもう大人ですぅー!」

あの時自分はその辺の大人より……お人好しなだけのガイより、立派な大人だと思っていた。

二つに結んだ黒い豊かな髪が雨粒にうたれる。
繰り返す記憶はあの時の青空色に輝く瞳を思い返していた。



「アニスにもいつか分かるよ、世界には不可解なことが多すぎるって」

焼き付いて離れない。









「アッシュ……どうして」

守ってくれると言ったのに。
ずっと傍に居てくれると。
それなのにガイの一言であっと言う間に崩れてしまった。

わたくしは貴方を恨みたくないのに。
ナタリアは強く唇を噛む。
彼は大切な仲間。
ガイは頼りになって優しくていつも手を差し伸べてくれて。
笑顔で、いつも、笑顔だった。
けれど、その笑みは心からではなかった。
きっとわたくし達を蔑んで憐れんで。

「ナタリア、俺が守ってやる……ずっと、
永遠に」

嘘吐き。
わたくしはガイを恨むでしょう。
わたくしの大切な人を奪った貴方を。
きっと死ぬまで。

















「ただいま、ヴァンデスデルカ」

「おかえりなさいませ、ガイラルディア様」

ガイは満面の笑みでヴァンに抱きつく。
その姿は失った過去を補っている様だった。

もう何年も過ぎた昔。
それでも拭えない深い傷たち。

それを癒やす為に俺はどうしたら良いんだろう?
なんて、答えはもう決まっているけど。

「ようやく始まる」

俺の全てをかけた物語が。
そう時間はかからない、刹那的なほろ苦い夢。

それが生きた証になる。











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ガイが全然出なかった…

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