セイギの声が消えるころ

□愛したのなら手を振って
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沢山の色づいた葉が宙を舞う。
クラトスはそっと一枚、それを手のひらに乗せた。
何度この景色を見ただろうか、だいぶ前に数えるのは止めてしまった。
此処は何年経っても変わらず、時が止まっている様な気にしてくれる。


世界は大きく変わって、あれから何千年も過ぎて。
英雄は何人も産まれて何度も世界を救って。
例えば正義の目をした伝説の始まりの少年、例えば白銀の凍れる少年、例えば魂を持たぬ複製の少年。

彼らは一様にして世界を救い、幸せに生きた。
同じく隣で微笑む仲間と共に。


美しい世界。
彼が愛した息子が救った世界。
何度も名前は変わり、彼が戦った時の世界の名前はもう何処にも記述されていない。




何度も何度も世界は回る。
メビウスは美しい輪を描き続けている。


そして、クラトスは気付いた。
世界が彼に与えた、褒賞か咎か判別出来ない代物があることを。






赤、黄、赤。何度も視界を移動させる。
紅葉と言うのだと、昔の仲間だった愛おしい彼に教えてもらった。
美しい赤い長髪と意志の強い瞳は何時までも心を掴んで離さない。
それはもちろん、今でも。






「クラトス!まぁた此処に来てたのー?」


彼は過去と同じ赤い長髪を靡かせ、クラトスの横に並ぶ。
その姿はクラトスの知っている彼そのままで。


「クラトスってばほんと此処好きだよねぇ〜……あ!この葉っぱ何て言うか知ってる?」
<天使様、この葉の名前知ってる?綺麗だよなぁ〜秋になると色が変わるのも良いよな>


もう数えられないほどの昔。
けれど何故だろう?ゼロスの声だけは、台詞は忘れられない。
教えられたその葉を見る為に私は毎年此処に来ている。

美しい色彩。
彼が教えてくれたもの。


「カエデ、だろう?」

「な〜んだ、知ってたの?」
<お前が教えてくれたものだからな>

その言葉が放たれることはない。
知らないに決まっている、彼は彼ではない、それは変えられぬ事実。
さく、と紅葉の敷き詰められた地面に足を交互に踏みしめてゆく。
振り返り、優しく誰にも分からぬ様に微笑んだ。
後ろで優雅に手を振る紅葉色の青年が見えた気がしたから。

「クラトスが紅葉好きだって言うから俺様の屋敷の庭にカエデ沢山植えたんだぜ?
来年になったら紅葉、見れるんでない?」

「そうか……それは嬉しいな」

「そりゃ、愛するクラトスのためですから〜」


その台詞は過去の彼と同じもの。
世界は回る。
ああ、また、あの季節が来る。












end



テイルズの世界が全部同じ世界だったら良いのにって話です。
そしたらチェスターとクラトスのコンビとかキールとクラトスのコンビが見れるんだよな…幸せだ…
まぁマイソロとかで共演してるけどあの設定はどうなのか(´・ω・`)

とりあえずすんごい難産だった…!
世界がひとまわりしてまたシンフォニアの世界に戻ったって話なんです〜
ファンタジア、リバース、アビスを何となく入れてみた…
一番好きなのはファンタジア、次がシンフォニア(*´∀`*)!

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