セイギの声が消えるころ
□使い捨ての蒼
1ページ/1ページ
白の咲き乱れる世界は、彼の悲しみだけを際立たせる。
花は一瞬の命を看取られることなく散らせ、人の命も同じで。
生者の葬列はただ虚しく、そこに故人はもう存在しない。
「自分のしたことは返ってくる。当然のことだろ?」
きらきら。きらきら。
幻想的な楽園で。
「それが貴方の罪ですか?」
誰より何より深い落園。
消えない祈りと終わらない懺悔。
「さぁ、どうだろうね」
手向ける花束。
消えるはずのない幸せな日々の記憶。
彼は少し伸びた髪を風に遊ばせ、見える紺碧の果てを探した。
「いらっしゃい」
彼の屋敷には、彼の瞳の色に似た刀身の剣が飾ってある。
静かに光るそれは彼の性格を示している様だった。
彼はずっと笑っている。
墓標に手向けた彼と同じ花を摘む時も海を見ていた時も。
あの時より痩せた白い彼。
後ろ姿はあの時、勇ましく美しく戦った<ガイ>のものではなかった。
「ガイ、」
「……俺はガイラルディア、だよ」
「そうでしたね、失礼しました」
ジェイドは失言だと瞳を伏せた。
そうだ、彼はガイラルディア。
ホドに全てを置いてきた、ホドに全てを捧げる人。
自分の知っているガイでは無い。
「はは、気にしてないさ。
今日聞きたいのは剣を握れる様になったかだろ?
残念だけど……剣を握れる様になったとしても、俺は二度と戦わない」
誰の命も奪えない。
どんな色の血でも見るのは嫌だ。
命を断つ音、感触、悲鳴、縋る手、罵倒、罵声、恨みのこもったあの視線。
もう俺では背負えない。
「分かっています。世界は平和になった……だから貴方が辛い思いをして剣を振る必要はない」
私が聞きたいのは。
聞かなければいけないのはそんな事ではない。
思い出に奪われるその前に、どうか言って欲しい。
その笑みを解いて一度だけでも。
「ガイラルディア、貴方は……幸福ですか?」
生きていたいと、思ってくれていますか?
その隣に居るのか私でなくても構わないから。
「もちろん」
冷たい笑み。
散らす花びら。ぬける蒼。
幻想は現実にはならない。
甘い甘い砂糖菓子。何を期待しているの?
「今すぐにでも死にたいくらい幸福さ」
end
剣握れない設定のガイです。
書きやすいから量産しそう…
なんかこれでシリーズにしよかな! 楽しい!自分だけかもですが笑
書き方をロマンチックな感じにしようとして挫けました…ジェイド難しい!