セイギの声が消えるころ

□心に居たい
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「ロイドには此処で幸せになって欲しい」

「私は決して忘れない。永遠に空を見上げる度にお前を想おう」











綺麗な空だった。
宵闇に光る星は静かに世界を照らし、誰も触れられない。


ロイドはひとり空を見上げ溜め息を吐いた。
分かってはいるんだ。戻って来るはず無いって。
クラトスはもうこの世界中、何処にも居ない。


「ロイド、また此処に居たんだね」


ジーニアスは少しだけ微笑んで隣に座る。
あの時より大人になった顔、伸びた身長は過ぎた時間を思わせた。


「もう日課みたいなもんだからな」


クラトスが居なくなってから、毎日この場所で夜に空を見上げている。
別に奇跡が起きて再会出来る、なんて思っていない。
世の中そんなに甘くないって分かってるから。

あれからもう何十年経ったんだろう。
すっかり体力も無くなって、過去の面影も無い。
クラトスはこの姿を見て何て言うだろう。
自分より貫禄がある、なんて怒るかもしれない。


ああ、会いたいな。
ああ、会えないんだろうな。





「なぁジーニアス、頼みがあるんだ」


いくら世界を救ったからって歳もとるし寿命もある。
だから俺はいつまでも待っていられない。
死んだら終わり。クラトスには会えない。

だからせめて、この想いを誰か覚えていて欲しい。
強がりで、でも優しくて繊細で。
忘れない。忘れたくない。


「どのくらい先になるか分からないけど、もしクラトスが帰ってきたらさ」


あーあ、もっと傍に居たかったな。俺も天使だったらな。
そう言ったらクラトスは怒るだろうけど。
そのくらい好きだってことなんだよ。


「俺が幸せそうに逝ったって伝えてくれ」


だって当たり前だろ?
アンタに会えて不幸に死ねないよ。
どんな幸せを足したって、クラトスに会えた幸せには勝てない。

きっと俺はもうすぐ死ぬ。
その最期まで空を見上げ続けるだろう。
死んだってアンタの心に居る。
そう祈り続けて。



















end





ほんのり悲しめ。
クラトス全然出てない…

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