セイギの声が消えるころ

□スイートリグレット
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「私はどうやら貴方が好きな様だ、クラトス殿」





救えなかった瞳を今も思い出す。
悲しそうに、けれど最期まで微笑んで許してくれた人。
視線を落としてみれば何時でも優しさをくれた人。
柔らかな肌を抱き締めるだけで幸福だった。


会いたい。
どれだけ時間が過ぎても、そう思える自信があった。

その小さな隙間に入り込んで来た感情。
受け入れるつもりはないし、そんなことがあってはいけない。
ふたりは同じ傷を抱えているだけ。
それ以上の感情を持つ、それは罪以外のなにものでもない。



「それでも、」

そこから先を聞かない様に空を見上げる。



輝く星空が嫌いだった。
消えた魂は星になると言うけれど、一度も見つけることが出来ないままだから。
何処に行ってしまったのだろう、私の、私だけの。

天に星、地に花。私の居場所は何処に?
幾千の孤独を埋めてくれた人はもう居ない、ならばこの世界に私は必要ない。

分かって。
ああ、分かっていた、けれど、受け入れるなんて出来なかった。
彼女を忘れることは全てを忘れること。
忘却、それが愛した女性が遺した言葉であったこと。

アンナ、それが本当にお前の望みだったのか?
私はお前を不幸にしただけで何も与えてやれなかった。
それでも愛してくれたお前を、どうして忘れることが出来る?


「私にもアリシアが居る……だが過去だけで人は生きていけないと、クラトス殿も分かっているはずだろう」

人は独りで生きてはいけない。
だか依存して縋って失ってまた探して、繰り返して。

のばされた腕、触れた体温。それを振りほどく青の光彩。


「クラトス殿」

「言うな、それ以上、もう言わないでくれ」

子どもの様に泣きじゃくる。
ぽろぽろ。流してはいけない蒼い粒たち。
落ちる度に忘れてしまいそうで、このままでは孤独で。







卑怯だと知りながらリーガルは強くクラトスを抱き締める。
追い込めば彼は崩れると分かっていた。
だから何処までも優しく、逃げ場を無くす様に。
その事実を知るのは自分だけで良い。
手に入れたかったから、ただそれだけ。

薄く開いた唇が弧を描いた。





















end



リーガルちょっと嫌な人になってしまった笑
アリシアのことはまだ好きだけど〜みたいな感じ

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