セイギの声が消えるころ

□最大多数の最大幸福
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「ルーク、お前ならどうする?」


頬を撫でる手のひら。
遠き幼い記憶、空色の瞳が優しく細められる。


「沢山の人が幸せになる、けれど誰かが犠牲にならなければならない。
……ルークならその道を選べる?」

綺麗事ではなくて、そうやって選ばないといけない時が必ずやってくるから。
美しい未来、振り返る過去を価値のあるものにするなら選ばなければいけない。

何を生かし、何を犠牲にするのか。


「俺にはよく分からないよ、ガイ」

ルークは眉を顰めてガイを見上げる。
その目は攫われる前より純粋になった気がする。
何も知らない、何も分からない可愛い主人。
その心のままに生きていける奪われない人生。
何時かこの純粋は汚れた俺を殺すだろう。
その時ルークはどんな顔をするのだろうか。


「はは、ルークにはまだ難しかったかな……じゃあ質問を変えよう」

すっと体温が下がる気がする。
美しかった情景、手を伸ばしても存在するのは闇ばかり。
全てを奪われたまま消えることなんて出来ない。
復讐、それすら生温い。


「お前が生き残るために俺を殺せる?」

どんな残酷な運命でも受け入れなければいけない現実がある。

殺さなければ殺される、奪わなければ奪われる。
お前はどちらを選ぶ?


「なに言って……俺がガイを殺せるわけないじゃんか!
ガイのことは俺がずっと守る!」

まだ小さな体でルークはガイに抱きつく。
その手は微かに震え、更に強くガイの服を掴む。

空色の瞳が一瞬見開かれ、しかしすぐに何時もの微笑みに戻った。

あたたかい。
これを奪ったらどんな顔をする?
裏切ったら生きていけなくなる?
心地良い罪悪感が体を包む。


「嬉しいよ、ルークがそこまで俺のことを思ってくれてたなんて知らなかった」

「だって俺ガイのこと……すすすす好きだしっ!」

「顔真っ赤だぞー?」

「うるせぇっ!」


甘い追憶。
触れたのは何時だったのだろう。
拒絶されたのは、何時からだった?






刹那の出来事。
全てが終わる瞬間。









「ルーク、お前、なんで」

「あの頃の気持ちは変わってない、俺がガイを守るよ……たとえ死んだって」



ずっとずっと守るよ。
ずっとずっと好きだよ。
ガイ、気づけなくてごめんな。俺のこと憎んでたんだな。

でも少しは愛されてたって自惚れても良いだろ?




その涙を拭う力もないけれど。












end





ガイが思ったよりルークは強かったって話です。
タイトルは今日講義で習ったもんで…
ガイは愛され上手!笑

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