セイギの声が消えるころ

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灯された光が消えるのは何故こんなに簡単なのだろう。
たった一息で、蝋燭の火みたいに、命は消えた。
火が消えない様に守る両手は脆くそれでも懸命に不幸から遠ざけようとする。


あの日吐いた言葉。
もう戻ることの無い日常と、それでも掴んだ手を忘れない。
白い花を供えてくれるのなら毎年この季節に。
終わりだけが色濃くなる冬の前の短い季節に思い出して欲しい。

赤は嫌い。
塗り潰しても消えないから。

白は好き。
どんな色にでも染まってくれるから。

許されないのは俺。
許さないのは世界そのもの。
憎んでいる、この未来を与えた全てのものを。


最高級の復讐を。
忘れることの出来ないトラウマを。
そうすれば可哀想なお前らは幸せでしょう?




ああなんて滑稽だろう!










「終わりにしよう。
それがお互い一番幸せなことなんじゃないのか?」

青い刀身が煌めく。
揺れる視界に映る仲間だった人たち。
気を抜けば赤を吐き出してしまいそうで、堪えるだけで精一杯だった。

その両肩をシンクとアッシュが支える。
この光景の少し前、ヴァンはただ悲しそうな目でガイを送り出していた。
彼には彼の為すべき事があり、それを捨ててまで主を守ることをガイ本人が許さなかった。
最期に立ちはだかる存在、それはヴァンでなければいけない。

最大級の痛みを。
それがアイツ等には相応しいのだから。

この先に待つ結末を、誰もが理解していた。
けれど独りで消えるのは嫌だから、せめて一緒に居たかった。



「ガイ!俺は……!」

ルークの悲痛過ぎる悲鳴が響き渡る。
その姿にティアは自分の無力さを痛感するしかなかった。
自分の思いを告げていたところで私の恋は叶わなかった、ルークを救えなかっただろう。
この美し過ぎる歪んだ絆の前には、何も出来ない。

ガイが死んだら彼の中で永遠になる。
もうルークの心は奪われたまま触れられないところまで遠くに行ってしまう。

歌声が震える。涙が滲む。けれど戦わなければいけない、それだけは分かっていた。


「ナタリア、さようならだ」

一閃、頬に赤が刻まれる。
それでもナタリアは動けないでいた。
アッシュが自分を殺そうとしているのは痛い程分かる、けれど彼を殺してまで為したいものが自分にはあるのだろうか?

国を治める、平和にする、それを望んでいたのはアッシュが居たから。
本当に民だけを思っていたのだろうか?わたくしにはアッシュが居ればそれで良かったのに。

視線を交わしても何も答えない。それが覚悟の違い。
何処かで思っていた。わたくしのもとへ帰って来てくれると。
なんて都合の良い夢を見ていたのだろう。


「やらせないんだから!」

巨大化したトクナガがナタリアとアッシュの間に割り込む。
苛立ちと怒り、それは誰に向けてなのだろう。
自分に?ガイに?
こんなことになるなら最初から冷たくしてくれれば良かったのに、あんなに綺麗に笑うから、騙されちゃったんだよ。
それが策だったんだよね、分かってるけど憎めない。
一度で良いからガイと釣り合う大人になってみたかった。
あたしが本当に大人になれる頃、ガイは居ない。



「大好きだよ、ガイ、大人になったって、ガイが居なくなったって」


誰にも教えない最期の秘め事。





























もうすぐ終わりそうです、女性陣難しい…

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