舞葬

□私が抱く命をもしも貴方が愛したら
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<俺の事は好きにならないで>


彼は何時もそう言って笑っていた。
綺麗な眸で綺麗な声で。
理由を聞いても曖昧にはぐらかすだけ。

風に揺られる午後の窓辺。
暖かな陽光とこじんまりとした部屋に一輪の花。
殺風景な空間を色づかせた桃色は彼そのもの。
鈴の音が響く素振り。
眩い白。


眸を閉じてみせて、彼は笑った。
何時もの気難しそうな表情で私に触れるだけ。
ひんやりと冷たい手。
裏腹に甘い言葉。
何時もならそんな事言わないでしょう?
貴方はそんなに弱くないでしょう?


<約束、忘れないで>


窓辺に降り立った青い鳥。
囀ずる事も叶わない。
貴方は何時の間にか痩せた頬をしていた。
飛び立つ姿はあまりに弱々しく私は止める術を持たずに。

光に包まれた未来。
貴方が望まぬ誰もが幸せな未来。
貴方は金色の衣で最期の言葉を紡ぐ。

細められた眸。
差し伸べられた腕。
掴む事は嗚呼出来ないのに。
悲しそうな目ばかりしないで、貴方が愛せぬ世界で私は生きねばならないのに。


<けれど、私は貴方を>


美しいのは夢の後先。
記憶を手繰りよせるだけで力尽きた小鳥。
生かす術を私が知っていたら何か変わっていた?
聖なる名を冠するだけ。
小鳥は天使にはなれない。
私の名を呼ぶ貴方をどうして願えないのだろう。


愛したのは彼の全て。
真っ直ぐな視線と見えない未来を掴める腕。
笑顔で私の名を呼んでくれるのが嬉しくて堪らなかった。
だからきっともう逢えない。
私は貴方を、ねえ。



きらりと光った雨粒。
笑い声だけは過去の、幸せな二人のままで。
最期に淡い口づけを。
貴方が見据えた未来の分まで私は歩き続けるだろう。









end

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