舞葬

□太陽の終わり
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「あっっつい!」

青年はひとり騒ぎながら炎天下の中歩いていた。
蝉の声が煩い。彼は舌打ちし、何時もより早めに足を進めた。


照りつける太陽。
なにか俺に恨みでもあるのか。


「仕方ないよ、夏だもの」


何時の間に居たのか、青年……悠よりも少し背の低い影が現れた。
こんなに暑いのに涼しげに微笑んでいる。

「……んなこと言ってもさぁ!」

「アイス買ったげるから静かにしようね、みんな見てるよ」

「やったぁ!絢ったら愛してる!」

「だから静かに……」

「やだもう照れちゃって〜」

「てててて照れてないよっ!」

「きゃー絢かーわーいーい!」






他愛も無い会話。
けれど誰もが知ってるんだ。エイエンとか言うものはこの世に存在しないってこと。


「絢は卒業したらどうするの?」

悠は買ってもらったアイスの包装を取りながら尋ねる。
もう大学4年生、もうこんなに長い休みは二度と無いだろう。
まぁニートとかになれば別だけど。

「んー……何も考えてない。どうにかなるかなって思ってるから」

「就職は?」

「僕は自由に生きるのっ」

その茶化した様な笑顔。
悠は静かに自分の胸に手をあてた。
……お前はなんで嘘なんか吐くんだろう?
好きな勉強する為に海外に行くって本当は知ってるんだぜ。
それを言わない俺も嘘吐きだけど。


「そか、俺はどーしよーかなぁ〜絢のお嫁さんにでもなるかな?」

「ははは、大歓迎だよ〜」

俺たちは結婚なんて出来ない。
法でお前を縛れない。それなのにこうやって戯れ言を紡いでばかり。

どちらも冗談で、どちらも分かっている。
この恋はもう散る前なのだと。

きっと気の迷いだったんだ。
きっとエイエンなんて信じてなかったし、絢だって同じ。
遊びとかじゃない、ほんとの本気の恋だった。
それでも気持ちは擦れ違うもので、それが分からない程子どもじゃない。
いつまでも楽しい恋なんて、有りはしないのだと。




「夏休み、どこ行く?ちょっと早いけど卒業旅行でもしてみる?」

「良いねぇ〜楽しそう」

「んじゃ、俺の家で計画立てようぜ!」



照りつける太陽が、どんどん世界を削ってゆく。
きっとこの夏が終わる頃、絢は何も言わずに消えるだろう。
どこか遠いところに行ってしまう。
それを縛るものを俺は持たないから、ただ知らない振りをする。







日差しが眩しくて苦しくて、もう瞳を開く事は出来ないんだ。

















end






崎様キリリク夏のオリジナルでしたー。
あんまり夏関係してない!!汗 よかったら貰って下さい〜!
まぁ同性の交際は難しいよねって話です…

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