家庭教師 夢

□雨ときどき どきどき
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一日が終わり、帰りの時間。
外では雨がざぁざぁ降っている。


5時間目の終わり当たりから
ずっと降っていて、


多分今日はこのままずっと降っていると思う。



うさぎはクラスでも目立たない
おとなしい性格で、




制服のスカートも規則通り。


リボンもちゃんとしていて、


ブラウスも第一ボタンまで閉めていて





世間的に見ると


“真面目ちゃん”


という部類だった。






しかし、いつも下をむいている癖からか、
誰もうさぎの美貌には誰も気づかないのだった。




そんなうさぎが帰ろうと
下駄箱に行き、傘置き場まで来ると


「!」


(・・・傘がない?)




うさぎは、自分の傘がどこにもないことに気づいた。

ほかの人たちの傘に紛れているんではないかと
よく探して見たものの、

自分の傘はどこにもなかた。



しかし、うさぎは慌てない。


自分の持っている傘は、
安いコンビニで売っているような傘だったので
誰かが間違って持っていってしまったんだろう。


(暁うさぎって書いてあるし・・・
気付いたら返してくれるよね?)



うさぎはそう思い、空をじっと眺めた。



やみそうにない雨


それどころか、どんどん強くなる雨。



(・・・困ったなぁ・・・)



うさぎはそう思いながらも
冷静に大雨の中をトコトコと歩いていった。

頭から大粒のしずくが当たって少し痛い。



(寒い・・・)


制服はびしょびしょ。

髪の毛はしんなりと肌にくっついている。


(気持ち悪い)


そんな苛立ちから、うさぎは歩調が速くなり



「きゃっ!」



濡れた地面で足を滑らせて
宙を舞っていた。



(転ぶ!?)











ストン。
















「え?」



うさぎの体は地面に付くことなく、




(誰かが抱きかかえてくれてる?)





という事に気づくまで5秒・・・





「大丈夫か?暁サン!」



上の方から聞き覚えのある声・・・



見上げるとそこには、




「や・・・山本君?」




そこにはクラスの人気ものの
山本君の姿があった。




「へへっ!暁さん傘ささないで
いきなり学校飛び出して、
走るわけでもなく歩ってっからさ、

俺寒いんじゃね?って思って、
ついてきちまったのな!」



山本はそう言うと、

ニカっとうさぎに笑い、

そのままうさぎの事を自分の傘にいれた。




「ぁ・・・///」


「濡れるぜ?」




そう言った山本の髪もかすかに濡れていて、


その姿がなんとも言えずに綺麗で


うさぎは思わず顔を赤くした。






「傘・・・なくなっちゃってて・・・
多分、誰か間違えてもってっちゃった。」



うさぎが静かにぽつんと言うと、

山本は


「まじか!」


と言って、また笑う。



(わ・・・山本君のこと初めて近くで見るけど、

クラスの女の子たちがかっこいいって言ってたの
今、すっごくよくわかる・・・)



「だからって、傘なしで帰るとか、
この雨で暁さん無謀なのな!」


うさぎと山本はゆっくりと歩き出す。



「だって、無いものはないし・・・
誰かに貸してもらうのも悪いし・・・」


「ははっ、じゃあ今度またあったら
そん時はまた俺の傘に入れてやるよ!」


「そんな!山本君に申し訳ないよぉ〜」


「なんだよ!こうやって話して帰るの
俺結構好きだぜ?」


そう言ってもらえるのは嬉しいが

それが自分以外の人にも言われていると思うと

なんか少しもやっとした気分だった。



「でも、私なんかと話したって
つまらなくない?」

「全然!俺ずっと暁さんと話してみたかったんだよな!」

「え?私と?」



うさぎは内心かなり驚いていた。



(クラスの人気ものの山本が私なんかと?)



「暁サンってさ、いっつも真面目だし
誰にでも平等で、優しいし

俺には出来ないことだよな!
俺は嫌いなこといっぱいあるし
不真面目だし!」


そう言った山本の笑顔に

うさぎはドキッと心臓を跳ねてしまう。


「そ、そんなことないよ?
私こうやって居るけど・・・

・・・まじめじゃないよ?」


「え?そうなのか?」


「私だって嫌いなものたくさんあるよ?
楽しくないことは極力やりたくないし。


本当は、みんなみたいにスカート短くしたいんだけど・・・
服装検査めんどくさいから」



うさぎはそう言うと山本に笑いかける。
山本は爆笑だ。


「暁サン、予想よりかなりおもしれー!
俺暁サン気に入った〜


これから仲良くしてくれよな?」



そう言って近づいてくる山本の顔に
うさぎはまたドキッと心臓が跳ねる。



(なんだろ・・・さっきも。
なんだかどきどきするよ・・・・・・)


「うん・・・」


うさぎの顔を見るなり
山本はニカっと笑ってきた。


「・・・それに、暁サンって
結構美人なのな?」

「へ!?」

「はははっ、もっと上を見て歩けよ?
せっかくの美人が台無しだぜ?」






ドキドキ






うさぎの心臓はもうカーニバルのように
すごくうるさかったし、

顔も


(絶対赤い・・・)



「ん?暁サン〜?」

「あ!なんでもない!!!!」




そういったものの顔の赤さなんて調節できない。

うさぎは心臓の鼓動と
恥ずかしさからまた下をむいてしまう。



「おいおい暁さん
何で下向いてんだよ?」


「だって・・・」



うさぎは顔をこれ以上ないくらいに赤くして
これ以上ないくらい心臓の鼓動を速めながら



「山本君、一つ一つどきどきする。」


「え?」


「山本君見てると、もうなんか
ずっとドキドキして、緊張する・・・」



それを聞いた山本はふっと笑って足を止めた。


「あれ?」


そこはうさぎの家。


(私の家・・・知ってたんだ)




うさぎが自分の家を確認したその時だった。








「!」




不意に来たのは



「わり、暁さんが可愛くて
ちゅーしちまった!」



山本からの突然のキス・・・



「ドキドキした?」



そして、山本からの質問。



「うん・・・」



「俺も暁と一緒にいると
おんなじ気持ちだぜ?」





そういうと今度は山本も顔を赤くして
うさぎにそう言ってきた。




「山本君もドキドキしてるの?」

「あぁ。暁といると、ドキドキする。」










この感情の答え・・・






それは・・・?










ときどきどきどき







恋のはじまりってやつですかね?









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