家庭教師 夢

□第6話
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ジルは手に何やら不気味なモノを持って

ベルに近づいていた。






ジル「ししし、病み上がりの弟ちゃん、
オニーチャンからのプレゼントだぜ?」



ベル「!?」




まだ起きるのがやっとのベルに

ジルはミミズがにょろにょろ動いている泥団子を持ってきた。



ジル「ろくに食べてねーだろ?
食わせてやるよ!ししししし!」


ベル「むぐむぐむぐっっっ!!!!」



ジル「ししししし!!!」






バン!



その瞬間、ベルとジルの居る子供部屋の扉が
大きな音を立てて開いた。



ジル「あ?」


うさぎ「ジル様!おやめください!」



そこには目の下を真っ赤にしたうさぎが立っていた。



うさぎ「ジル様、ミミズ入り泥団子だなんて冗談にしても、

ベル様を殺す気ですか?」



そう問いかけるうさぎに



ジル「ししし、あぁ。殺す気だったぜ?」


うさぎ「っ・・・!」



ジルがそう答えれば、うさぎはとても悲しそうな顔をした。




うさぎ「とにかくベル様、医務室へ行きますよ。」



うさぎはベルを医務室へ連れていこうと
ベルの手を引っ張る。



しかし、


パシッッ




うさぎ「え?」


ジル「!」



ベル「・・・何アンタ」


うさぎ「!」




ジルは意地悪そうにうさぎを見ていた。


うさぎは今にも泣きそうだったが、


頑張って抑えていた。



ベル「王子に許可なく触るなよ。

召使いだとかなんとか知らねーけど」



その一言は今のうさぎには重すぎる言葉だった。


ジルは笑うのを必死でこらえている・・・



うさぎ「・・・申し訳ありません、ベル様!
召使ごときが調子に乗りました。すみません。」


うさぎはいつものように深々とお辞儀をすると、

二人の前から走って去っていった。




ジル「しし、ししししし!!!!」


ベル「あ゛?」


ジル「ベル本当に覚えてないんだ?うさぎのこと」


ベル「は?なんだよあいつ。
俺が記憶喪失になって憂鬱忘れた存在だっけ?」


ジル「ししし。あぁ」


ベル「じゃあ、俺の中でその程度だったんじゃん」


ジル「しし、その言葉忘れるなよベル・・・」


















うさぎ「・・・ベル様・・・」



うさぎは一人涙を流していた。



何よりもベルが自分を忘れてしまったことがショックでたまらなかった。




この城、この国は階級の差別が激しい。



ジルがうさぎを嫌う理由だって階級だ。


うさぎはこの国の中でも下の方の階級。


それでも、変に身分の高いメイドや召使よりも使える上に
子供だから給料は小遣い程度で済むという理由から
毎日毎日使用人までにもこき使われてきたうさぎ




そんな中、




ベル「ししし、うさぎたまには一緒に遊ぼうぜ?」

うさぎ「しかし、私は召使です。ベルフェゴール様とお戯れになるなど・・・」


ベル「ししし、いいじゃん♪
じゃあ、王子の命令ってことで俺と戯れよーぜ!」


うさぎ「・・・ベルフェゴール様」


ベル「しし、ベルフェゴールって長くね?
ベルでいいって。」


ジル「・・・」


ベル「あいつもジルでいいからさ。
これ、王子命令♪」


うさぎ「ぁ・・・///」






――そんな中ベル様だけが私に優しくしてくれた




ベル「うさぎ〜、うさぎ〜」


うさぎ「なんでしょうか?」


ベル「これ、あげる」


うさぎ「これは・・・、クッキーというお菓子ですね」


ベル「そ。王子はいっぱいあるから、
うさぎにあげる。しししっ」


うさぎ「ぁ・・・ありがたく頂戴いたします」





――ベル様が私の生きていく中でただ一人仕えたいと思った人




ベル「ししし、こんなに寒いのに水て手洗い?」


うさぎ「仕事ですから・・・」


ベル「ししし、うさぎ手貸してみ」


うさぎ「え・・・ベル様!」



ベル「王子があっためてあげるよ ししししっ」




――優しかったベル様、大好きだったベル様


今どこに行ってしまったのですか?













外を見れば


雷雲が近づいているようだった・・・。













 
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