記念

□2012ナルト
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意趣返し



「ねぇちょっと!あんた、ネジの従妹よね?ちょっとお願いがあるんだけど。」

「え?」

任務を終えたヒナタが家に帰ろうと歩いていると、不意に後ろからそんな声をかけられた。
聞き覚えのない声にキョトンとして振り返ると、そこにはやはり知り合いではない数人の少女達の姿があり、ヒナタは益々キョトンとして首を傾げる。
振り返ったヒナタにお願いを聞いてもらえると思ったのか、ヒナタの目の前にいた少女はヒナタが首を傾げると同時に口を開いた。

「ね、従妹ならネジの好みのタイプとか知ってるでしょ?ほら、あと1ヶ月もすればバレンタインだから、ネジの好みのタイプに少しでも近付いて、告白したいの。だから教えてよ。」

「え……と…。」

突然そんな事を言われても。
ヒナタは困ったように眉を寄せ、目を伏せて申し訳なさそうに少女達に頭を下げた。

「ご、ごめんなさい…あの、私…ネジ兄さんとそんな話した事なくて…。」

「ええっ!!?従妹なのに知らないの!?」

「何よもう!使えないわね!」

当てが外れた少女達は、八つ当たり気味にヒナタを詰り始める。
それにヒナタが言い返さないでいると、1人の少女が腕を組みながら威圧的に口を開いた。

「だったらさ、今からネジに聞いてきてよ。あたし達、あそこの店で待ってるから。」

「え…で、でも……。」

「なぁに、まさかそれぐらいの事も出来ないってわけ?」

お願いしているとは思えない高圧的な態度の少女達に、気の弱いヒナタは否と言う事が出来ない。
結局ヒナタは、少女達に言われるままネジを探して好みのタイプを聞き出す羽目になったのだった。


◇◆◇◆◇


白眼を駆使してネジを探し当てたヒナタは、重い足取りでネジの元へと向かっていく。
ネジは日向の集落近くの演習場で、同班であるリーやテンテンと共に修業をしているようだった。
この2人がいるなら、まだ聞きやすいかもしれない。
それでもヒナタの憂鬱な気分は晴れなかった。

(真面目に修業してるところに、好みのタイプなんて聞きに行ったら怒られそう…。)

和解したとはいえ堅物であるネジ(ヒナタはそう思っている)に、そんな浮わついた事を尋ねるのが恐いのだ。
だが渋々とはいえ、少女達の願いを聞いてしまったヒナタに聞きに行かないという選択は出来なくて。
ヒナタは重いため息を吐きながら、ネジのいる演習場に足を踏み入れた。

「……ん?」

「あれ?ヒナタちゃん?」

「あ、本当ですね。ヒナタさーん!」

ヒナタが近付いていくと、3人共がこちらに気付いて視線を向けてくる。
それに怖じ気づきそうになりながら、それでも何とかヒナタはペコリと頭を下げて3人の元へと歩いていった。

「どうしたんですかヒナタ様?」

ヒナタが側に来ると、ネジはリーと組手をしていた手を止めてヒナタへと向き直る。
ネジと目が合った途端ヒナタはブワリと全身を真っ赤に染めて、恥ずかしそうに俯いてしまった。

(よ、よく考えたら…こ、好みのタイプを聞くなんて、すごく恥ずかしい…!!!)

今さらながらお願いされた内容を聞くのが中々恥ずかしい事だと気付き、ヒナタは俯いたまま二の句を告げられないでいる。
勿論ヒナタのそんな態度に、ネジの心は激しく動揺した。

(な、何だ?俺の顔を見た途端あんなに赤くなって…。……も、もしや漸く俺の気持ちが通じて、俺に想いを伝えようとしてるんじゃ…!?)

それなら、ヒナタの為にも2人だけになった方がいいんじゃないだろうか。
全く見当違いな事を思いながら、ネジはどうすべきかを思案し始める。
だがネジが勘違いするのも無理はなかった。
ここに来て、自分の顔を見た途端真っ赤になって恥ずかしそうにモジモジするヒナタ。
きっと、ネジでなくとも勘違いするだろう。

「も、もしかして、あたし達お邪魔じゃないかしら。」

「そ、そ、そうですね!ぼ、僕達は向こうに行ってましょうか!」

現に、ネジと一緒にいたテンテンとリーも勘違いして、そそくさとその場から離れて行こうとしていた。

「え、あっ…ま、待ってください…!ぜ、全然邪魔じゃありませんから、ここに居てください…!」

ネジ達が勘違いしている事など露知らず、ヒナタは慌ててテンテンとリーを引き留める。
この2人がいなくなってしまっては、緊張し過ぎてネジに問いかける事が出来なくなってしまう。
ヒナタは意を決し、顔を上げてゆっくりと口を開いた。

「あの、ね…ネ、ネジ兄さんの、好きなタイプを…教えてほしいんだけど…。」


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