「“スキ”だよ」
老子の薄い唇を離れて数瞬のタイムラグで鼓膜にうち響き、脳内に電流となり変換され届き、理解された言葉は淡く消え。
「――どちら……の、意味でしょうか?」
親愛、か。
情愛、か。
親鳥が雛に育む確かなソレか、番に求める温かな温かなソレか。
求めた問答に少しだけ逡巡した老子は微かに苦笑いを含んで。
「保護者の気持ちも勿論あるけれど……ソレ以上に私は申公豹に隣に在ってほしいと思うよ」
甘く響く言葉の意味を理解できないほど私も鈍くはなくて。
だから私は――
「私も“スキ”ですよ、老子」
精一杯の気持ちを言の葉に乗せて
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