楽しきゃいいんです
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(視点無し)
木手の言葉が、やけに響いた。
平古場自身、自分がどれだけ頑固だったのか、自分をどれだけ誤魔化していたのかを教えられた気がした。
今まで謝るなんて事は格好がつかないと勝手に決めつけていた。
頑なに、何が何でも自分からは謝らないと思っていた。
…木手が言っていた、「好き」だとかそういう感情は分からない。
けれど、今の重い空気は居た堪れない。
とにかく先ずは自分なりに気持ちに整理をつけて、ちゃんと自分から謝ろうと決心した。
掃除用具を放り出し、涼音の元に走った。
「神矢!」
…久しぶりに名前を呼んだ気がする。
それ以前に、自ら話しかける事すら久しぶりのように平古場は思った。
「…ひらこば…くん?」
振り向いた涼音。
だが。
グラッ
「っ!?神矢!!」
その瞬間、涼音が崩れ落ちた。
26 謝る事は難しいんです