楽しきゃいいんです
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…なんか、うちが思っている沖縄ライフとは違う気がしてきたぞ。
十数分程歩いて、ふと思った。
なにこれ、とにかく暑い。
まだ本格的な夏を迎えてないからって言っても、ここは沖縄なんだ。
日差しが死ぬほど強い。
何の日焼け対策も無しに家を放り出されたんだから、日焼けは避けられないだろう。
明日には黒人になってるかもしれない。
観光もクソもなんもないよ。
はんぱねぇよ沖縄。
こんな中生活すんの?
「うわー…なんか先が思いやられるんだけど…って、あ」
暑さにやられながら歩いていると、ようやく目の前に学校が現れた。
門に『比嘉中学校』と書いてある。
そうかこれか、うちが通う学校は。
「お……お―……。やっとついた……暑いよホント……」
開かれている門にもたれ掛かり、座る。
ギリギリ木陰に入り、漸く一息吐けた。
長かったよここに辿り着くまで。
絶対焼けたわコレ。
「…はー…」
無駄に晴れ渡り、照りつける太陽を隠す雲すらない空を見上げて頭を力無く倒す。
…少し耳を澄ますと、どこからか波の音が聞こえてくる。
海…近いのかなぁ。
「沖縄の海……きっれ―だろうなあ……」
引っ越しのドタバタでまだ海には行っていない。
沖縄に来たからには見てみたいよなぁ…。
これから生活してくんだから、望まなくともいつか見れるとは思うんだけど。
「海…見た―いな―…」
「やー、海見たくとぅ(事)ないんだばぁ?」
「…………」
「ちょ、無視さんけ―!(無視するなよ!)」
…………え?
気付いたら目の前に人が立ってた。
びびった。
気配消すなよこの野郎。
…てーか。
なにこの金髪?誰?
うち?うちに話かけてるの?
独り言に返事なんかしないでほしい。
「…うち?…ですか?」
ふと見ると「比嘉」って書いてあるジャージ着てるよこの人。
この学校の生徒か。
「…やー以外にたーがいるんばぁよ(お前以外に誰がいるんだよ)」
ちょ、呆れた目で見られましたよ。
てかコイツ何て言ってるの?
沖縄の方言なんか分からんし!
誰か!誰か通訳を呼んでください!!