楽しきゃいいんです
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「これで全員揃いましたね」
学食の一角を陣取り、うちらは席に座った。
揃ったけど……なんか慧くんの迫力に圧倒されてるんですけど。
その、横のデカさ?
というか…持ってきた食べ物の多さ、というか。
なんかすっげぇ。
「…ぬーばぁよ、わんのちら(顔)に何か付いてるんばぁ?」
「え?あ、なんでもないよ。…ご飯おいしそうだなーと」
本当に慧くんの持ってきたヤツのが美味しそうだよ。
ゴーヤづくしDXと変えて貰いたい。
「やーにはやらねーらん!!」
「べっ、別に欲しいとは言ってないけど…」
欲しくないからむしろ貰って。
「ぷっ、田仁志が食いモンを他人にあげる訳ねーらんからな。むしろわったーは自分の分守ることに必死なんやっし」
食い物争奪戦か。
浅ましいな。
「平古場クン、口を慎みなさいよ。ゴーヤ食わすよ」
「へいへい」
オカンが食わさなくてもうちが食わしてやるのに。
「それでは、いただきましょうか」
「「くわっちーさびら!(いただきます!)」」
「くわ…?」
「…いただきますってことさー」
「あ、ありがとう知念くん」
オカンの挨拶でいただきますもするのかコイツら。
ちょっとした家族だな。
濃い家族だなぁ。
仲間には入りたくないものだ。
「それで、神矢クンはどうですか。転校してきて」
「へ?」
うわ、何事もなかったかのようにオカンもゴーヤづくしDX食ってるよ。
そのうちこいつ全身緑色になるんじゃねぇの?
「今日転校してきたんですよね」
「あ、ウン」
「コイツすげーんだばぁよ。1限目からいきなり廊下に出されてたしな」
「ちょっ、それ言うなよ!」
「…ほう?」
「…!!」
お、オカンの眼鏡が光った!
「ち、違うし!あれは…ちょっとムカついてしまったというか…てかうちだけじゃないし、平古場くんもだかんね!」
「ブッ!そ、それをあびるんなら裕次郎もやっし!」
「はあ!?わ、わんは巻き込まれただけさぁ!」
「だったらうちもだからね!?あれは平古場くんが教科書見せてくれないから!」
「あ、あの時は少し気が立ってたからやっし」
「そんなん理由に入るかぁ!いきなり廊下立たされて内申下がったら平古場くんのせいだかんな!」
「う、うっせ!」
「うるさいよ」
「「「スイマセン」」」
ぴしゃりと言われ即答で謝る。
オカンの怒りに平古場くんと甲斐くんも標準語で謝っちゃってるじゃん。
「まったく、君たちは落ち着きというものがありませんね。食事の時ぐらい落ち着いたらどうですか」
「ご、ごめん…」
「…わっさん」
「…まあそれだけ生活に慣れているなら良いんでしょうが。無駄にはしゃいでみっとも無い真似だけはしないでくださいよ」
「…うん」
お母さんに怒られてる気分になる。
なんでうちがそう言われなきゃいけないんだろう。
オカンはうちの本当のお母さんでもないのに。
家族でもなんでもないのに。
他人なのに。
無理矢理ならされたマネージャーなのに。
「マネージャーは部の一員でもありますから」
前も言ったが、こいつ人の心読めるんじゃねぇの?