楽しきゃいいんです

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時間はちょっと遡って、ついさっき。

初めての部活が終わって制服に着替え、さっさと帰ろうとしてた時。

いきなり甲斐くんに呼び止められた。

「涼音―!」

「…なに甲斐くん」

またか、とか言ったら落ち込みそうだから呑み込んだ。

「一緒に帰ろーぜ!」

「え?…甲斐くん、帰る方向一緒だっけ?」

さあ?

さあ、ってあんた。

「別に良いやっし。いろいろ寄り道したいから方向とか関係ないんどー」

「寄り道?」

「裕次郎の寄り道は長いからなぁ。神矢、覚悟した方が良いぜー」

着替え終わった平古場くんが言って来た。

「平古場くん…。おま、覚悟って」

覚悟しなきゃなんないくらいの長さってどんくらいなんだよ。

「それだけしたい事があるってことさぁ」

「へいへい」

力説する甲斐くんに、話を受け流すように平古場くんは返した。

「えー…うーん、うち早く家に帰りたいんだけど」

「あらん!」

「…違う?って何が」

「今は『駄目』って意味やし」

「あ、そう…」

琉球方言は難しい。

「…でもなんで?なんでうちとなの?」

「え……あー…なんとなく?

理由になってませんが。






で、結局訳も分からないまま一緒に帰るハメになりました。

本当にがっつり寄り道をするみたいで、家とは真逆の方向にフラフラとやってきてしまった。

なんでやねん。

学校でもあんだけ疲れたのに帰宅もさせてくれないのかい。



「かーいーくーんー」

「ぬーやが?」

「帰宅しましょーよ」

「無理」

無理って。

てか、平古場くんも知念くんも慧くんも木手くんも用事があるとかで来てないし。

なんか甲斐くんと2人だけだし。

なにこの空間。

このフリーダムを制限できるような力がうちにあるとは思えないんだけど!

「うち金ないんだけどー」

「ちゅー(今日)はあんしー(そんなに)金かかるとこじゃないし、大丈夫さぁ」

「いや、だからうちは無一文だから」

「ツケにしといてやるから気にすんなって!」



ああ、奢るという広い心は持ち合わせてないのね。
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