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□変わってしまっても
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「青峰くん、部活行きましょうよ」

僕は机に伏せて眠っている青峰くんを揺する。

「んー…テツか。部活?冗談言うなよ、部活なんかかったるいことできるかょ…」


僕は教室で熟睡していた青峰くんを起こすが、青峰くんは部活には行きたくないようだ。




―――――――

「青峰くん、部活行きましょう」

「おぅ!!今日もナイスパス頼むぜテツ!!」

「はい」


―――――――





昔の会話が嘘のようだ。


「青峰くん。君より強い人は世界にはたくさんいるんですよ?」

「いねぇーょ。少なくとも中学にはな。」

「そんなことわからないでしょう?」

「わかるんだょ。それにテツ、お前もわかってんじゃゃねぇのか?俺より強いやつなんていねぇって」

「……青峰くん」

「俺に勝てるのは俺だけなんだょ」

「……」




青峰くんは変わった。

昔は僕のパスを誰よりも
必要としてくれていた。

真っ先に
僕のとこに走って来て
僕らは拳をぶつけ合った。



今の青峰くんは
もう僕のパスを
必要としていない。

青峰くんに僕は
もう必要ないんだ。


「テツ…そんな顔すんなょ…」

青峰くんの手が頬に触れる。

そんなに酷い顔をしてただろうか。僕は俯いてしまった。


青峰くんは変わった。

僕のパスを
もう受け取ってくれない。
だから僕も必要ない。


それなら楽なのに…。


青峰くんは
変わってしまっても

バスケで独りになっても

僕自身には
大切なものを触わるように
とても優しい。


「青峰くん…」


いずれは僕自身も
突き放すくせに。


「テツ…俺がいなくても、バスケ楽しいか?」


その言葉を聞いて青峰くんの顔を見ると、青峰くんは



今にも泣きそうだった。



「テツ、俺、





どうしたら、いいんだょ」



「青み、ね…くん?」

「俺はバスケが好きなはずなのに、テツも好きなのに、バスケをするのは辛い…」



青峰くんは変わった。

けどこの泣きそうな青峰くんは以前の青峰くんだった。

青峰くん…いつか君がまたバスケが楽しいって言えるように僕は強くなります。

だから待っててください。すぐに戻りますから。

君の影に。

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