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□加速
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また広がったアイツとの距離。

どんどん加速していくアイツ。

「…」

追い付きたい一心でただひたすら練習しても、なかなか縮まらない距離。


「火神じゃん」


後ろを振り向けばアイツ。


「見に来てたんだな」
「あぁ」
「知らなかったな」
「うそつけ」
「…知ってたよ」


そう言えば青峰は近くの椅子に座り、俺を手招きして隣に座らせる。


「今日の試合、どうだった?」
「黄瀬もすごかったけど…お前が一番すごかったな」
「当たり前だろ」


言葉とは裏腹にそう言った青峰の表情は、先ほどの苦戦した試合を思い出しているのか、少し暗かった。

ま、それほど苦戦するなんて思ってなかったんだろう。

つか、んな顔すんなよな。
と心の中で呟き話しかける。


「青峰」「?」
「俺はバスケでお前に勝ちたい」
「…」
「だから待ってろよ」


暗い表情の青峰にそう言う。すると青峰は


「くだらねぇな」


と言いながら少し笑って


「俺はもう止まらねーぞ」


と言って立ち上がり、バスの時間だと言っていなくなった。


「アイツ、まだ加速する気かよ」


そう呟いたが、周りの空気に溶けていった。

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