本棚U
□今→青←若
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昼休み、購買に行った帰りにふと目についた青色。無意識にそちらに足を進めた。
中庭の隅の今はあまり使われていないベンチの一つに寝転がりゆっくり寝息を立てる彼はバスケ部の後輩、青峰大輝。その表情は普段の傍若無人っぷりは想像できないほどのあどけない表情だった。
「ったく、何でこんなとこで寝てんだよコラァ」
あまりに穏やかな彼の表情に起こしてやろうかという気すら失せて無意識に手が伸びる。
触れた青峰の髪は想像以上に柔らかい。自分自身でもびっくりするほど優しい己の手に彼の口元が僅かに緩む様子が窺えた。
「こうやって寝てでもしてりゃー、可愛いのによ…」
ポツリと呟いて普段見れない彼の姿に優越感に浸っていた時、
「なんや、若松に先越されたんか」
「うおっ、主将…」
唐突に後方から掛けられる声に過剰に肩を浮かせてしまった。
今吉曰く、教室の窓から中庭を眺めていたら昼寝中の青峰が目にとまり降りてきたら先客がいた、と口にした。
「えらいご機嫌で寝とるんやなぁ…」
ニコニコとした笑みを絶やさないまま青峰の顔を覗き込む。
今吉の指先が青峰の褐色の頬を滑れば無性にムッとなり若松は口を開く。
「起きちまうぜ?」
「大丈夫大丈夫、そう簡単には起きへんやろ」
何の根拠もないままにお気楽そうに笑う今吉に若松は忌々しそうに舌打ちを零す。
「どっかの国のお姫様みたいやのう…。そや、どっちが白馬に乗った王子様か決めよか?」
何とも唐突すぎる今吉の台詞に唖然とする若松。
そんな若松に笑みを絶やさないまま言葉を続ける。
「簡単なことやで? どっちのキスで起きるかっちゅー話や」
「は…? キスって主将何考えて……!?」
「あら、やらへんの?」
ニコニコとした今吉の本性が読めずとして若松は葛藤する。
本人の許可もなしにキスなどするなんて青峰にも悪いし、己の中に罪悪感が残るであろう。
しかし、目の前の相手だけには譲りたくもない。ましてや指をくわえて見ているだけだなんてまっぴら御免だ。
「っ…、やるもやらねーも本人の意思とかあんだろうが」
「こういう時は庇うんやなぁ。いつも練習来おへんだら怒鳴っとるくせにー」
さらりと嫌味を紡がれれば黙ってなんかいられない。
「なんだとコラァ…」
「で、やるのやらへんの?」
「やるにきまってんだろうが!」
「ほな、順番決めよか。じゃんけんでええか?」
「望むところだコラァ!!」
「後から文句はなしやで?」
「当たり前だ!」
先攻の方が有利に決まっているこの勝負、これだけは負けられない。
「いくで? 最初はグー、じゃんけん…」
「どっせえぇえーい!!」
出た手は互いに指を開いたパー。
「じゃんけん時もうっさいのう。それなんとかならんの?」
「気合い入ってんだよ、別にいいじゃねーか」
「まあ今に始まったことでもないからのぅ…。それでお姫様が起きへんだらええ……」
「…何やってんだよ」
目を覚ました青峰が寝起き故に眉に皺を刻んだ不機嫌な表情で二人を睨み上げる。
「うおぉおっ!?」
「あらー、起きてしもたか」
激しく動揺してあたふたとする若松と残念そうな声を漏らす今吉。
青峰は先輩二人囲まれている今のこの状況が理解できず怪訝そうに眉を寄せたまま。
「若松がうるさかったせいやで?」
「なっ…! 確かにそうかもしれねーけど…」
「だからオマエらオレの睡眠妨害して何してんだっつーの」
二人のやりとりに唯一何も知らない青峰が問う。
もちろん若松は答えられずはずもなく気まずそうに視線を外す。それとは正反対にニコニコ顔を青峰に向ける今吉。
「どっちが白馬に乗った王子様かっちゅーのを若松と…」
「どっせええぇえい!!」
さらさらと本当のことを紡ぎ始める今吉に慌てて叫んで止めようとする若松。
「あ? なんだよ、白馬の王子様って…。つか若松サンうっせーよ」
「お前は知らなくていいんだよ!」
「えー、別にええやん。本当のこと教えても」
「よくねーよ! それより青峰、今日こそは顔出せよコラァ!」
このままではペラペラと何ともなしに喋りだすに違いない今吉に危機感を感じて、青峰に一言告げてから彼を引っ張ってその場から逃げるように校舎に向かった。
「自分奥手やなぁ。そんなんやからうまいこといかへんのやで?」
引きずられながら忠告のような台詞を吐く今吉。
そんな言葉に瞬間眉を寄せてから負けじと言い返す。
「主将こそ積極的すぎてデリカシーないのもどうかと思うぜ?」
「ほーう、なかなか言ってくれるやないの。なら勝負やな、どっちが正しいか」
「ぜってー負けねぇ」
「そら、俺も同意見や」
「っくしゅん…。あー誰かオレの噂でもしてんじゃねーだろうな…」
互いに負けられない気持ちなど知るはずなく青峰はくしゃみを一つ漏らした。
end.
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素敵すぐる(笑
萌えた←
ありがとうございました!!