天の声よ風に乗れ
□天の声よ風に乗れ
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「昌浩・・」
安倍晴明は小さくつぶやいた。
昌浩がいなくなってから三日たったが、昌浩はまだ見つからない。
「晴明様」
「どうした、天一」
「これを」
そう言って渡してきたのは、文だった。
「どこからじゃ」
晴明が天一に聞いた。
「はい、橘鴨忠(たちばなのかもただ)殿のお屋敷からです」
その内容は、こんなものだった。
「「先日、我が屋敷に一人の娘を迎えた。少し、妖が視えるようだ。なので、屋敷の周りに結界を張ってほしいのだ。よい返事をまっている」」
とのことだった。
橘鴨忠といえば、このごろ名を上げてきた貴族である
信頼をえてをおいて、損はないだろう。
「そうだのぅ、結界のことなら昌親でもよかろう。成親も同行させるか、天一、昌親と成親にこのことを伝えてくれ、あと橘殿に文を届けてくれ」
「分かりました」
そう言って天一は穏行した。
「昌浩・・」
晴明は、またぽつりとつぶやいた。
ーあとがきー