天の声よ風に乗れ
□天の声よ風に乗れ
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「ここをまっすぐ行くと目的地だ」
成親は、そう言いながら歩いている。
今、成親と昌親、そして騰蛇と六合が橘邸に向かっているのだ。
いつもは昌浩についている騰蛇と六合だが、
今は晴明の命令で成親と昌親についていた。
しかし、物の怪は乗り気じゃない
「晴明はどうして俺を行かせるんだ」
「おじいさまの考えは、想像できないですからね」
昌親は前を向きながら、目だけを物の怪に向けた。
「あそこだ」
六合は、小さくつぶやいた。
そこは、安倍家を二つ三つ分ぐらい合わせた大きさだった。
すると・・
「お待ちしておりました」
一人の女房が邸から出てきた。
「こちらでございます、今、鴨忠様はお出掛けしております。なので私がお連れするようにと」
「分かりました。お願いします」
答えたのは、成親だった。
そして女房のあとをついて行くと、御簾が見えてきた
その向こうに人が、三人ほど居る。
その人たちの真ん中にもう一人いるようだ。
「あそこの真ん中にいるのが、浩月姫でございます」
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