BLEACH
□陽だまりの君と。
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蜜豆の粒が、溶けるように殻を破って口いっぱいに広がっていく。
いつもの甘味処。いつも頼む味なのに、いつものような優しい甘い気分にはならない。
「…不味い…」
ぽつりと落ちた言葉に、店奥の店員が一瞬良いとはいえない表情をした。
いつもは好きなこの時間が今日はとてつもなくつまらない理由。それくらい判ってる。
いつも、今日――ルキアの誕生日には一緒にここにいる、幼馴染みがいないからだ。
副隊長になってからは、色々と忙しいのだろう。
今日だって、絶対来いとは言ったがそんなに期待はしていなかった。
なのに、こうも物足りないのは何故だろうか。
向かい側のぽっかり空いた席を一目見やって、短く溜め息をついてから、仕方がないので半分以上残った白玉あんみつを置いて店を出た。
外に出ると、歩く横を、いよいよ冬本番となった風が寒さだけを残して通りすぎていく。
初めて歩く今日の日の帰り道は、何だか一段と寂しい雰囲気だ。
「……恋次の戯け…」
「誰がたわけだ、この野郎」
思わず振り返ると、よく見知った赤い髪があった。