Prelude

□Prelude〜最後の時〜
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7人は頂上の一本木の前で薪に火をつけ、明かりを灯した。
マナは横で眠る母親を見ながら、静かに悲しい過去を語った。
たった三人取り残された真実を…。

風音はその話を聞きながら涙ぐみ、ヴァルジェは俯いた。
「だから私はがむしゃらに人から金品を奪い取って行った。そのお金で母様が目を醒ますならどんな天罰が下っても構わないと思った。だって、あの日逃げたあの時から、私の運命は変わったのだから…。」
涙ながらに語るマナの両隣に、今まで二人三脚で歩んできたユイとコウナが座っていた。
「私にはもう母様しかいないから…。」
そう言い、涙を流すマナに対し、誰も責める事が出来なかった。
ただ一人ピートだけは、胸のモヤモヤを消すことが出来ないでいた。
「俺だって、たった一人の母さんだったんだ。」
呟くピートの声にマナが顔を上げる。
「そうさ。あんたが母さんを思うのと同じくらい、俺だって母さんが大切だったんだ!なのに、何で簡単に殺した!?俺から母さんを奪ったんだ!!」
「私は…!」
「俺はずっと悲しかった。母さんのいない日々は辛かった。俺の為に…命の花を取りに行った為に、母さんは…!」
マナは何かと思い出したようにピートを凝視する。
「お前、あの人の子供だったのか?」
「やっぱり知ってるんだな!」
食ってかかりそうな勢いのピートの手を、風音は掴む。
「くっ…。」
「ローズさんは、ヴァナワに襲われる亡くなったんだ。」
「何を?!キリシアを通った旅人が母さんは盗賊に殺されたと言ってたんだぞ!」
「それは側に私たちがいたからだろう…。ローズさんがヴァナワに襲われた時、私達は駆け寄ったんだ。私達にはもうどうする事も出来ず彼女はこの世を去った。一本の命の花を握って…。」
「嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ!!」
頭を左右に振り、マナを睨み付ける。
「お前が信じられない気持ちは分かる。…でも、本当の事なんだ!私達はローズさんに手をかけていない。」
「…だって、旅人がお前たちが殺ったって…。」
何処に気持ちをぶつければ良いのか分からず、ピートの小さな胸は痛んだ。

自分の為に死んだ母。
大好きだった母がキリシアで死んだことは事実だった。

「ローズさんはあの一本木の下で眠っている。彼女の最後の願いだった。愛した夫と息子を見下ろせる頂上で眠らせて欲しいと…。」
ピートの身体は震え、気持ちが高ぶっていく。
「うわぁー!!」
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