Prelude

□Prelude〜真実〜
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「カザネ様!カザネ様!」
風音はキュアリーの甲高い声で目が覚めた。
目をこすりキュアリーの方に顔を向けると、彼女は血相かいた表情で覗き込んでいた。
「どうかしたの?」
「それが、ヴァルジェ様の姿が見えなくて、皆んな大騒ぎなんです。」
「ヴァルが?」
「はい。いつも通りお付きの者が部屋へ入ったら、ベッドはもぬけのからで。しかも寝た形跡すらないのです。それでオズ様が昨日一緒に出掛けられたカザネ様なら知っているのではないかと!」
風音は口元に手をやり、視線を床に落とした。

ヴァルが行方不明?
もし、今彼が行くとしたら、高貴の丘。
でも、一人で、しかもお城を抜け出して行くなんて…。

「カザネ様?」
「もしかしたら、高貴の丘に向かったのかもしれない。」
風音はベッドから出ると、急いで服を着替えた。
そして、キュアリーにオズの元へ連れて行ってくれる様に頼んだ。
キュアリーは不安そうに顔を曇らせ、風音の前を歩く。
3階まで降り、石の渡り廊下を歩き、突き当たりの部屋をノックした。
ドアを開けると中には王、ソフィア、オズ、リヴの4人の姿があった。

「カザネ、ヴァルジェの場所を知っているのか?」
「…たぶん、高貴の丘だと…。」
王は右手で顔を覆うと、大きなため息をついた。
「何故、その様な所へ?」
オズが一歩前へ出ると、気持ちを押し殺すように言う。
「昨日オババさんの所に行って聞いたんです。高貴の丘に行けば、プレデュードの事が分かると。だから行ったのだと思います。」
ソフィアは気遣うように、王の肩に手を置いた。
王はソフィアの手に、自分の手を重ね顔を上げた。
「大丈夫です。王子は強い子です。きっと何事もなく帰ってきますよ。」
「ソフィア様、それは“風よみ”としてのお言葉ですか?」
訊ねるリヴに対し、ソフィアは微笑んだ。
「いいえ、母親としての言葉です。ヴァルジェが黙って行ってしまったという事は、余程の事なのでしょう。」
「…ですが。」
「私にはヴァルジェの事を風で知る事は出来ませんでした。それはヴァルジェが大丈夫な証拠です。何処に行ったのかさえ分かれば良いのです。」
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