短編

□最悪の別れ方
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『好き・・・』

「何も言うな・・・!」

『離して?冬獅郎』


だって離したらお前は


『大好き、大好きだから・・・』

「知ってる!」

『離してよ・・・・・・』


お前は


『俺は行かなくちゃいけないの』

「俺の手を離してか?」

『・・・・・・・・・・・・・・・』

「一護・・・・・・」


優しい それが仇となってしまった


「泣いてる、離れたくないんだろ?ならいいじゃねぇか」

『泣いても、行かなくちゃ』

「行かせない」

『俺は行くよ』


泣きながら笑うな


『信じて、俺は――――・・・』



―――お前は嘘をついた

手を離しても帰ってくるって言ったじゃんか

今度は泣いてない顔で笑えよって言ったのに、笑顔すら見てないぜ?

嘘つき、帰ってくるって言ったのに


嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき



悲しすぎて涙すら出なかったよ



あの大規模な戦争は一人の犠牲で終止符を打たれた

敵の死者もいない こちらの死者は・・・・・・

いいや、行方不明が一人 しかしもうこれは死んだも同然



あいつの手をあの時離すべきじゃなかった


行き場を失くした左手


(―――絶対帰ってくるよ)

「嘘つき」


最後に見たのは君の泣き顔

最悪の別れ方


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