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□エレジー
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──幸せそうな、笑顔。
彼女は、盛大な祝宴の席でリクオ様に寄り添っている。
私が恋い焦がれてやまなかったそこに。
嗚呼、神様
貴方はなんて残酷なのですか。
彼の祖父、父 そして彼までもが人間を愛した。
私はどう足掻いても人間にはなれない。
彼はいずれ妖怪を統べる総大将になられるお方。
私はこの想いを打ち明けることすら許されない、彼の下僕。
最後はこうなる、運命だったのだろうか。
「つらら」
気がつくと、向こうで若が呼んでいた。
「はい、リクオ様」
貴方を目の前にしたら、この感情が溢れてしまいそうで
それを恐れた私は目をあわせることすらできない。
――なのに、
「お前も、祝ってくれねぇかい」
そうリクオ様は笑って、盃を差し出される。
心から、祝福できるはずなんてないというのに。
それでも貴方が、そう望んでいるのならば
「リクオ様、」
嗚呼、神様
私はお慕いすることさえ許されないのですか
「結婚、おめでとうございます」
エレジー
さよなら私の、恋心