short


□昼下がりとキミと僕
1ページ/1ページ


「ねぇ、つらら」

部屋から出るところだった彼女の後ろ姿に、僕は呼び掛けた。


「はい何でしょう?」
「あのさ、ちょっと話があるんだけど・・・いいかな?」

そう言って僕は、目の前の机にある、先程彼女が持ってきてくれた茶菓子に目を向けた。

すると突然、
あっ、とつららが声を漏らした。

「すみません、お菓子足りませんでしたっ?」


焦ったように言うつららの姿に、思わず苦笑した。

「違う違う、」
「え、それじゃあ」
「まぁ取りあえず、座ってよ。折角つららの持ってきてくれたお菓子もあるんだし」


―――――

「それでさ、つらら」

カステラを口一杯に頬張りながら、彼女は顔をあげた。あんなにたくさんあった茶菓子はもう残り少ない。妖怪と言ってもさすが女の子というか。

「はい、なんです?」


「つららは・・・昼と夜、どっちの僕がいい、かな」

これは、最近ずっと考えていた事だった。そもそもどちらが本当の僕なのか、そして本当の僕とは何なのか。幾ら考えても自分一人では答えが出せなかった。
答えのない不安に、頭は混乱していた。



「・・・・・・・・・」

暫く沈黙が続いた。
やっぱり止めよう。こんなの聞くようなことじゃあないよな。

そう思った直後―――

「すみません、リクオさま」

つららが口を開いた。

「考えたんですけど・・・わかりませんでした・・・」

「うん、ごめんね。突然変なこと聞いちゃって―――」

「私は、リクオ様、が好きです!!」


驚きすぎて言葉を失ったのは初めてだった。


「だからどっちがいいかなんてわからないです。だって、どっちも同じリクオ様じゃないですか。昼か夜か、どちらかを選ぶことなんて不可能です」


そうか――――


今まで僕は、こんな単純なことに悩んでいたのか。

というか、今は新たな問題が生じて、それどころではなくて。

とにかく――――



「あっ、大丈夫ですかリクオさま!?顔が、顔が紅いです!熱がおありでは・・・」

とにかく、顔が熱い。

「何でも、ないから」


君が原因だなんて言えるはずもない。


机に突っ伏すと、つららの悲鳴が聞こえた気がしたがそのまま僕は瞼を閉じた。



昼下がりとキミと僕
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ