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□昼下がりとキミと僕
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「ねぇ、つらら」
部屋から出るところだった彼女の後ろ姿に、僕は呼び掛けた。
「はい何でしょう?」
「あのさ、ちょっと話があるんだけど・・・いいかな?」
そう言って僕は、目の前の机にある、先程彼女が持ってきてくれた茶菓子に目を向けた。
すると突然、
あっ、とつららが声を漏らした。
「すみません、お菓子足りませんでしたっ?」
焦ったように言うつららの姿に、思わず苦笑した。
「違う違う、」
「え、それじゃあ」
「まぁ取りあえず、座ってよ。折角つららの持ってきてくれたお菓子もあるんだし」
―――――
「それでさ、つらら」
カステラを口一杯に頬張りながら、彼女は顔をあげた。あんなにたくさんあった茶菓子はもう残り少ない。妖怪と言ってもさすが女の子というか。
「はい、なんです?」
「つららは・・・昼と夜、どっちの僕がいい、かな」
これは、最近ずっと考えていた事だった。そもそもどちらが本当の僕なのか、そして本当の僕とは何なのか。幾ら考えても自分一人では答えが出せなかった。
答えのない不安に、頭は混乱していた。
「・・・・・・・・・」
暫く沈黙が続いた。
やっぱり止めよう。こんなの聞くようなことじゃあないよな。
そう思った直後―――
「すみません、リクオさま」
つららが口を開いた。
「考えたんですけど・・・わかりませんでした・・・」
「うん、ごめんね。突然変なこと聞いちゃって―――」
「私は、リクオ様、が好きです!!」
驚きすぎて言葉を失ったのは初めてだった。
「だからどっちがいいかなんてわからないです。だって、どっちも同じリクオ様じゃないですか。昼か夜か、どちらかを選ぶことなんて不可能です」
そうか――――
今まで僕は、こんな単純なことに悩んでいたのか。
というか、今は新たな問題が生じて、それどころではなくて。
とにかく――――
「あっ、大丈夫ですかリクオさま!?顔が、顔が紅いです!熱がおありでは・・・」
とにかく、顔が熱い。
「何でも、ないから」
君が原因だなんて言えるはずもない。
机に突っ伏すと、つららの悲鳴が聞こえた気がしたがそのまま僕は瞼を閉じた。
昼下がりとキミと僕