拍手ろぐ

□パールの子育て奮闘記!
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期末テストが終了し、さあ明日から夏休み!と浮き立つ気持ちは学生ならでは、だ。今年は高校2年生、まだ遊べる時期だし、どこ行こうかな、なにしようかな、などと考えを巡らせていた、矢先。

「……え、あの、なに?もう一回言って」

理解できなくて、というかしたくなくて、もう一度と促す。箸を下ろさず目を白黒させるオレをみて笑い、母さんはオレの望み通りもう一度、口にする。

「お隣りのアヤコさんの息子さん。夏休み中にお預かりすることになったからね」
「それはいい!いや良くないけど!そ、の、つ、ぎ!」
「あんたがんばんなさいね」
「それ!どういうことだよ!」
「そのままの意味ね」

うふふと笑って、母さんは箸を置く。お茶を一口飲んで、手を組むと、こちらを見て言った。

「母さん、パパに会いに行ってくるからね!」
「オヤジ?」
「ダディって呼ぶように言われてなかった?」
「それはいいだろ…」

悪戯っぽく笑う母さんは、若いなと思う。
オヤジは、強者たちが集まるバトル施設――バトルフロンティアシンオウ支部の、バトルタワーでタワータイクーンをつとめている。
強くてかっこいいオヤジ、は、自慢だしオレも好きだ。そして、そんなオヤジといつでもラブラブな母さんも好きだし、同時に憧れでもある。こんな家庭を築けたら、なんて(時々甘すぎて呆れるけど!)。

「忙しいけど、ちょっとだけ時間取れるみたいだから。…もし、パールがよかったら…って」
「あーはいはい、二人きり、ね。楽しんで来なよ」
「本当?ありがとう!お土産たくさん買ってくるからね」
「そんなに買ってこなくていいよ…」

母さんの嬉しそうな顔を見るのは好きだし、二人ともオレのことが邪魔だとか思ってる訳じゃないって知ってるから、特についていく理由もない。けど…。

「アヤコおばさんは?息子預けるのオレでいいの?」
「パールくんなら安心ねって笑ってたわよー」
「いい加減だなー…」
「子育てがいかに大変で素敵なことか、この機会にパールも知っておきなさい」

にっこりと笑って、母さんは食器を片付け始める。オレは食器を母さんに渡して、お茶を飲みながら、ぼんやりと母さんの背中を見つめていた。



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