めいん2

□Nとトウヤ
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※捏造注意!


秋の夕暮れ。オレンジ色の淡い光が差し込むライモンシティの観覧車で、僕と彼女は向かい合って座っていた。秋の始めに出会った彼女はチアキさんといって、OLであるということ以外は何も知らない。チアキさんは手を重ねて背もたれに身を預け、揺れるゴンドラから夕日を眺めているらしかった。横顔がオレンジに照らされて、すごく、綺麗だなあって思った。
いつから好きだったとか、わからない。多分、知り合った始めの頃から、憧れ、みたいなものはあったと思う。綺麗だし、一緒に居て、とてもドキドキした。

「ねえ、トウヤくん」
「は、はい」

チアキさんが、小さく口をひらいた。

「今日はね、トウヤくんに大事な話があるの」
「えっ」

思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。大事な、大事な話!?まて、まて落ち着けトウヤ。この雰囲気、この空気。これはもしかして、もしかしなくたって。


告白……じゃないですか?


きた。ついに、きた。
どうしよう、どうしよう。大丈夫ですきっと何があっても僕はチアキさんを大切にしますから!
そう、小さな戸惑いと大きなときめきで胸を膨らませて、チアキさんを見たとき。

「私ね、結婚するの」

「はい!…………え?」

ぽかん。
予想外の答えに、心臓が止まるかと思った。だって、だって……え?

「け、…結婚」
「ええ。私…なかなか彼と向き合う勇気がなくて…。でもね、トウヤくんに会って、勇気もらった」
「……あ…」

重ねていた手をほどく、チアキさん。白くて細い薬指に、きらきらと輝く、小さな指輪。

「トウヤくん、ありがとう」

初恋とははかなく散るものだと、昔見た映画のヒーローが言っていた。


***


「……ぐす」
「トウヤ、大丈夫?」
「もう立ち直れない」

冬を迎えて冷たくなったライモンシティの観覧車に、僕の心も寒々しくうちふるえた。失恋の虚しさや。そして何故、今一緒に観覧車に乗っているのがNなのか。

「ベルがよかった」
「トウヤー」
「トウコでも…いいのに…」
「プラーズマー」
「もう違うだろ」
「元気づけようかと」

ふふ、と笑うNを一瞥して、はあとため息をつく。ふわふわの髪を揺らして、Nは首を傾げる。あー、変わんないなあ

「初めてNと観覧車乗ったの、春だったなあ」
「トウヤ、あんまり嬉しそうじゃなかったね」
「今だって嬉しくない」
「うそ」

Nは僕の隣に丸まっているジャローダに視線を向けて、なにか話しているようだった。こういうときに感じる疎外感が、最近どうしてか多い気がして。

「トウヤ」
「んー?」
「ボクもトウヤに大事な話があるよ」
「なんだよ、Nも誰かと結婚するの?」

ほおづえをついて、ゴンドラから外を眺める。Nの方なんてちっとも見ていなくて、だからNがどんな顔してるのかわからなかった。ただちょっと、笑っているような気はした。
だからかもしれない。Nのこと考えないで、ずっと夕日を見ていたからかもしれない。

「ボク、トウヤが好き」

「……へ、」
「トウヤが好きだよ」
「……トモダチ?」
「じゃなくて」

しっかりとこちらを見るNの目が、鋭くてぎゅっと心臓を捕まれた気になる。なにが、どうなって、るんだっけ?

「ボク、トウヤが好きだから」

ゴンドラから差し込む夕日が眩しくて、降下していた観覧車は否応なしに、いちばん下へ帰り着く。目をしばたたかせる僕を見て、Nは少し笑っただけだった。
え、と、ちょっと待ってくれよ。Nだろ?
ありえない、そう思ったはずなのに、心臓が鳴り止まないのはなぜだろう。

そう思ったはずなのに、すぐに断れなかったのは、なぜだろう。




失恋ラプソディ





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押しに弱いトウヤくん。






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