めいん2

□12月24日
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世間はクリスマス・イヴ。街中は華やかなイルミネーションに彩られ、光り輝く街路を恋人達が寄り添って歩いていく。それはそれは羨ましく微笑ましい光景だろうと思う。
かくいう俺も、恋人、ではまだないけれど、だいじなだいじな相方であるダイヤモンドと、今まさに隣り合って歩いている。…はずだったのだけれど。


『劇場版タウリナーΩ!デモニッシュの復活!来年春ロードショー、みんな、劇場まで応援に来てくれよな!!』

電器屋のおもてに陳列されているテレビから流れるロボットアニメの宣伝が、今まで隣を歩いていた彼を、地面にたやすく縫い付けていた。目を輝かせてタウリナーΩに見入っているダイヤに、ドキドキと高鳴っていた胸は次第にもやもやとくらい雲を漂わせはじめた。
おいおいダイヤモンドくん。今日はクリスマス・イヴだぜ、大きなツリーだって綺麗に光っているじゃないか。
少しくらい、こう、なんか。いい雰囲気になったってほら、罰当たらないと思わないか?

そんなことをむうむうと考えていると、ずっとテレビの前に立っていた彼の靴が地面から離れ、こちらに駆け寄って来るのが見えた。やっとかい。

「パール、パール!タウリナーΩが映画化だって!見に行こうよ」

街を彩るイルミネーションにも負けぬほどきらきらの笑顔で話すダイヤに、しかし俺の心はまだ動かなかった。

「やだ」
「え〜なんで」
「…あれじゃん、こないだDVD貸してくれた先輩と行けば」

うっかりと録り忘れた回のタウリナーΩを、たいそう嘆いていたことがあった。でもその話を録画していた先輩がいたらしく、貸してくれたんだよと嬉々としてダイヤが話してくれた。もやもや。

「…やだ」
「なんで」
「オイラはパールがいいの、パールと映画見に行きたいの」

……え、と。
ぼん、と一気に熱くなる頬をマフラーでごまかして、小さく俯く。ダイヤは俺をびっくりさせるのが得意なんだろうか、不意打ちはずるいと思う。
街を彩るイルミネーションが、なぜかさっきより綺麗にみえた。

「…わかった」
「ほんと!?」
「うん」
「やったあ!パール、約束だよ」

頬を上気させて、ダイヤが笑う。
差し出された冷たい小指に、自分の小指を絡めながら、これってデートの約束じゃないだろうかとぼんやり考えた。



Merry mas!!





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