めいん2

□シンドローム
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なんの前触れもなく目覚めると、今まで見ていた夢と覚めた現実のギャップに、しばらく頭がはたらかないことが多いのだと思う。眩しい朝日を、上品なレースのカーテンが緩和している。
夢をみた。
どんなゆめだったか、もう消えかかっているけれど、君が泣いてたような、そんな気がする。

隣のベッドをみるともぬけの殻だった、少しめくられた布団とマットレスの間には膨らみがない。それだけで少しざわついた胸に気づいて、はあ、とため息をついた。ダイヤだって自分より早く起きることくらいあるだろうに、あんな夢みたからだろう。
あんな夢って、どんな夢かわすれたけど。

オレもベッドから出ようとして、ふと違和感をかんじた。ちょっとからだを動かして、わかる、このかんじ。
そろりとからだを動かして、寝返りをうつ。すると、すぐ目の前で、いま探していた相方がすやすやと眠っていた。非常に穏やかな寝顔で。

(……なんで?)

ベッドはきちんと分けたはずだ、おやすみって言ったし、ダイヤもちゃんと向こうのベッドに入った。…はず。うん。大丈夫。…大丈夫?
なにもしてないよな、なにも。服、着てる。オッケー。
いや、なにがオッケーなの。

ダイヤと同じ部屋で寝るのは久しぶりだった。三人が一人になる前までは、一人ずつのときもあったんだけど。
懐かしい、と思った。小さい頃はよく同じベッドに寝ていたし、ダイヤはお寝坊さんだったからオレは早く起きたらずっとダイヤの寝顔を見ていたし。

彼の寝顔を見るのは好きだった。何となく、同じベッドで寝ていたあの頃から、この寝顔をみるたびにオレがついててあげなくちゃ、なんて思ってた。それはなんていうか、庇護欲、みたいなものだったのかもしれない。けど。
ずっと後ろにいる気がしてた。いや、オレが前にいたかっただけなのかもしれない。後ろじゃなくて、隣を歩きたいと、彼は言った。
はっきりとオレに、言った。

「だめなのかなあ、オレは」

ダイヤのやわらかい頬に触れて、ぽつんと呟く。音を持たないこの広い部屋は、オレの小さいつぶやきも残らず吸い取ってくれる気がした。

ミオシティでわかれてから、ダイヤだってたくさん成長しただろう。からだはあんまりかわってない気がするけど。
力無い手を握ってみる。寝ているからか普段より暖かいきがする。思いきって抱きしめてみると、やっぱりまだ手放したくなくなった。

好きだって言ってもいいんだろうか、オレはまだ大人にはなれないから、このあたたかさが愛しい。だから。



(まだ、離れていかないでよ)



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