めいん2
□15cm
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ふらふらとゆれるその手に触れたくて、気づくとゆっくり、手を伸ばしている。そのすきま、15cm。ああいけない、そう思っていつも引っ込める。もどかしくも、埋まらない距離に、想い。隣を歩いていても、いつもいつも視線を奪われて、最近よく、怒られる。
「パール」
「……」
「ねえ、パールってば」
「……」
「ど〜したの〜?」
「……あ、え?」
なにが、と、返したら、なんかぼうっとしてたから、と言われた。「ちょっと考え事」そう言うと、ダイヤは訝しげな顔をして、「ふ〜ん…」といっただけだった。
「へんなパール」
小さく呟くダイヤの、ゆれる手にやはり視線がいく。マフラーを緩めようと上がる彼の手に、ついていくようにおれの視線もあがった。ぱちん。その先で、不思議そうに見つめるダイヤと、目があう。
「……」
「パール?」
「あの、…ごめん」
「なにが」
ほんとに、なにに謝っているのやら。慌てて顔を背け、背けた先であれなんかすげえ不自然な行動じゃねといまさら恥ずかしくなる。ああ怪し過ぎる。
「あ、ねえねえ、ここの肉まん美味しいんだよ〜。買っていかない?」
「え」
「?、パール肉まんきらいだっけ?」
「あ、いや……うん、ピザまんにする」
「えー」
何となく、肩透かしをくらった気分だった。味だけじゃなくてね、見た目も大きいんだよーと楽しそうにわらう彼に、あっそうかーと空元気。
言及しないのか。そう問う勇気もなくて、それもそうかと自虐的になる自分がいて。あーあ。
いっそやめちゃえば、こんな関係。
なんて。
できっこないことしってるのに。
神様、お願いです
この距離15cm
(埋める勇気を)
(オレに下さい)
15cm、だけでいいのに
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