めいん
□眠るきみに秘密の愛を
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目の前ですやすやと寝息をたて、幸せそうに眠っているオレの相方。
無防備にソファとお友達になっている彼に、オレは呆れたような、腹立たしいような気持ちでいっぱいだった。
…お昼から新しいネタの練習しようって、約束してたよな、絶対してた。うん。
おかしいね、ダイヤモンドくん?
悔しいのでふにふにと柔らかい頬をつねってやると、ダイヤはんーと身じろぎだけして再び夢の世界におちていった。
こうなった相方がそうやすやすと起きるわけがないということも、悲しいかな、長い付き合いの中で分かっているのだ。
(長期戦になりそうだ……。)
オレはダイヤを起こそうと肩に手をかけた。
揺すって起こす、多分。
それでも起きなかったら、強行手段にでる予定ではあるけれど。
オレはとりあえず、漫才の練習がしたいんです。
ちょっとだけ横暴かもしれないけど、オレはあの日あの庭でダイヤと一緒に、シンオウ一面白い漫才師になろう、とまあ端的に言えば将来を誓い合ったのだ。
なんていうかダイヤにも、漫才に積極的になって欲しいのである。
ついでにオレの気持ちにも気づいて欲しいかなぁ、なんてね。
ダイヤ、と呟いて揺すろうと力を入れた時だった。
「…パール…」
目を閉じたまま、相方が呟く。
一瞬起きたのかと思ったけれど、日常的に寝坊する彼のことだ、ただの寝言だろう。
そうだ、ただの寝言なのだ、ちょっとドキッとしたぞ。
ダイヤは時々、本当に卑怯だ。
そんなオレの事を知ってか知らずか、お寝坊さんな相方は、素敵な夢を見ているのかふんわりと微笑み、言った。
「……すき…」
「………………」
え、え。
思わずぴたりと動きを止めてしまった。
ダイヤの肩にかけた手を、ゆっくり、離す。
(いま、なんて。)
そんなに幸せそうな寝顔で。
消え入りそうな声音で。
小さく、小さく、でも、はっきり。
(……す、き?)
「…なんだってんだよ…」
そんなこと言われたら、起こすに起こせないじゃないか。
頬が熱くて、オレは正気を取り戻そうとするように深呼吸する。
目の前には、相変わらず無防備な相方の姿。
「オレも、すき、だよ……」
きっとお前とは、違う意味になるんだろうけど。
「ダイヤ…」
大丈夫、…大丈夫。
自分に言い聞かせ、顔を近づけた。
閉じられた瞼は微動だにしない。
ドキドキと早鐘のように鳴る心臓がうるさくて、その音でダイヤが起きてしまいそうな気がする。
寝息まで届く距離で、薄く開いた彼の唇へ、静かに自分の唇を重ねた。
眠るきみに秘密の愛を
(君が起きたら)
(いつもの自分)
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title by「確かに恋だった」
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