めいん
□とけてひとつに
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「ねぇ〜、パール」
「んー?」
「……まだ繋いでるの?」
「んー…」
ダイヤが痺れを切らしたようにぽつり。
オレはダイヤの右手を左手で握ったまま、彼が左手でケーキを食べようと奮闘している様を頬杖をついてぼんやり眺めていた。
「嫌?」
「うーん、嫌じゃあないけど……ケーキが食べづらい」
オイラ左利きじゃないよ〜と不満を漏らしながら再びケーキに立ち向かう相方。
やはり左手ではうまく力が入らないようで、フォークはなかなか上層部のガナッシュを通り抜けない。
ダイヤは握られた手をちらりと見て、それからオレをみた。
「…………」
「…………」
放せと言いたいらしい。
オレ<ケーキなんですね、面白くない。
「フォーク、貸して」
「?、うん」
ダイヤの左手から、オレの右手へ。
渡されたフォークで、オレは器用にケーキを切り、分けられたひとつにぷすりと刺した。
そしてダイヤの口元へ持っていき、
「口、開けて」
「ん?」
「あーん」
「!、あーん!」
彼の口へ、押し込んだ。
「美味い?」
「うん!」
食べられれば何でもいいらしい。
やっとケーキにありつけた食いしん坊の相方は、とてもとても幸せそうだ。
オレはまたそれを切り分け、ダイヤの口へ運ぶ。
食べさせあっこ。
オレだけ楽しい、恋人ごっこ。
ケーキにご執心な相方に、オレは今日だけ、本当に感謝した。
とけてひとつに
(このままなれたら)
(いいのにね)
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