めいん
□コウヒカ
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コウキくんはよく怪我をする。
研究所で助手をしているからめったに外出なんかしないだろう……と、私も思っていたけれど、そうでもないらしい。
ナナカマド博士の役に立ちたいんだ、ときらきら輝く笑顔で話してくれたコウキくん。自分の意志で、シンオウをまわって図鑑にポケモンを登録する旅をすると申し出たらしい。
まあ、私もジュンもポケモン図鑑をうめるなんてことは引き受けたもののやる気なんて毛頭なく、博士が頼りにしているのもコウキくんだけだろなあ、と思う。
図鑑をうめるより、バッジ集めをしたりして実力を上げる方が優先事項だからだ。
「コウキくん、怪我増えたね」
コウキくんの手のひらに貼られた絆創膏を見ながら、私はぽつり、呟いた。
よく見たらおでこにも。
コウキくんって意外におっちょこちょいなのかな。
「え、そうかな?」
「そうだよ、前のも治ってないのに。あんまり変な所行っちゃだめだよ」
「変な所って……」
「あ、やっぱり増えてる。ほら」
ズボンの裾をめくりあげて足首に映える包帯を指摘すると、コウキくんは困ったように笑って言う。
「大した怪我じゃないし、そんな心配しなくても」
「するよ!コウキくん、私よりポケモンに詳しいくせに、肝心なところで鈍くさいんだから」
「厳しいなあ」
ヒカリはストレートだね、とまたコウキくんは笑う。反省すること、大事だと思うわ、私。
「そういうヒカリだって、よく怪我するじゃないか」
「えっ」
確かに私だって怪我は絶えないけど、それは私がポケモントレーナーとして旅をしているからには当然の事であって、こうして指摘されるとちょっと狼狽える。
「そ、それは……。私トレーナーだから、まあ……」
「なに言ってるの、ヒカリは女の子だろう?」
あんまり傷つくっちゃいけないよ。
そう言ってコウキくんは私の頬に手を伸ばし、貼られた絆創膏を軽く撫でた。
それだけで私の心臓はびっくりするくらい跳ね上がり、早鐘のように鳴るのだった。
ずるい、ずるいわ、コウキくんって。
私の赤いコートをめくって、左手に巻かれた白い包帯を見つけると、コウキくんは、あ、と声をあげた。
私が三日前にコリンクと遊んでつくった傷だった。
「なに?」
「みて、これ」
コウキくんが自身の上着の左腕をめくると、そこには私と同じように白い包帯が巻かれていた。
手首から五センチ上、肘には届かない、そのくらい。
「おそろいだ」
コウキくんは笑った。
つなぐ、白
(そんな些細な共通点が)
(なぜかとても嬉しくて)
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