めいん

□ほら、聞かせて
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「なぁ、ダイヤ」
「なーに?」
「キス、しよっか」
「やーだ」

当たって砕けて、撃沈。
思わず押し黙るオレをよそに、ダイヤは飴玉をひとつ、口に投げ入れた。
飴玉は良くてオレはダメだなんて、そんな殺生な。

「…ダイヤ。キスしたいんだけど」
「だーめ!」

半ば襲いかかるようにダイヤに詰め寄ってみたが、ダイヤは顔を背け、オレを遠ざけるように身体を押し返した。
そんなに、そんなに嫌なのか…!!ちょっと傷付きます、いやかなり傷付きます。

「あーもう!なんだってんだよー!なんでダメなんだよおー!理由を!理由をくれよ!?」
「……うー…」

惨めったらしく叫ぶオレに、ダイヤはちらりと視線を寄越して小さく唸る。控えめに染まった耳朶が目に留まったが、今はそれを可愛いだなんて思う余裕は無かった。死活問題だ。

「…………」
「…………」

オレはそのままじっとダイヤを見つめて、何か言ってくれるのを待った。オレはせっかちな方だから(それはもう自他共に認めている程)、こういうのは本当に、本当にもどかしい。だが、相方はじっくり考えて答えを出すタイプだから(のんびりやともいう)、こうやって待つのも策のうちだ。

そんなオレの行動が功を奏したのか、どのくらいか秒数をおいて、ダイヤはおずおずと「……じゃあ」と呟いた。おお。


「……じゃあ、すき、って、言って?」
「………………は?」

思わず聞き返してしまう。
ええ、と。
今、なんと?

「あの、だから、好きって言って……欲しいんだ、けど……」
「……………」
「パール、キスとかぎゅ〜ってするのはいつもしてくれるんだけど、……あんまり、好き、って言ってくれないでしょ?だから……あの、ちょっと不安で…」

……こ、れは……困った。
ダイヤの言うとおり、オレは言葉での愛情表現があまり得意ではない。だってほら、なんか恥ずかしいから、だ。
なんでだろう、キスするのはそこまで恥ずかしくないし、ハグも平気だし、手繋ぎとかも普通に出来る。
でも、でも。


言葉で愛を伝えるのは……やっぱり恥ずかしいんだ……!


「………ええ、っとぉ……」
「……………」
「……その、……」
「………」


なかなか出てこない言葉に、ダイヤの眉尻はみるみる下がっていく。ただただ不安げに見つめられ、オレもだんだんと胸が締め付けられてくる。

嗚呼、そんな顔、させたいわけじゃないのに。
キスもハグも手を繋ぐのも、ダイヤだからなのに。


「…ダイヤ」
「……?」
「……、あ、」
「…、あ?」


「愛してる、よ!!」






ほら、聞かせて

(君の言葉で)
(愛の証しを)





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へたれなのかよくわからない
パルルンのはなし



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