めいん

□ゲンさんとダイヤくん
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ぱらり、とページを捲る。終わりから始めにかけて、ぱらぱら。ひらひら踊るように過ぎていく紙の束は、やがて白の上に這う黒を現した。ああこれは、相方の字だ。ぼんやり考えて、走り書きされたような、決して綺麗とはいえない文字の羅列を目で追う。使い古されたこのネタ帳も早三冊目。パールはとくに意識することなく、いつもこのノートをネタ帳に使っていたっけ。
ぱらり、ぱらぱら、ぱら。
踊りながら過ぎていったページはついに終わりを告げ、オイラ達が三冊目のノートに最初に書いたネタが現れる。相変わらずパールの字は綺麗じゃないけど、なんでかオイラはこの字が好きだった。

「ダイヤモンドくん」

突如響いた声にぱたり、とノートを閉じて、視線をそちらに向けた。声のした方には、今オイラが修行を見てもらっているあの人がいた。黒いハットを被ったあの人は、オイラと視線が合うと、やんわりと微笑んだ。

「ゲンさん」
「何をしているんだい?もう遅いから早く眠りなよ、明日も早いからね」
「はい〜」

オイラものんびり返事をして、ペンをノートの上に置くと立ち上がった。
うん、あんまり夜更かししちゃいけないよね、オイラには時間が無いんだから。
此処、こうてつ島でゲンさんに修行を見てもらって強くなって、そして、一週間後に湖に落とされるかもしれない爆弾の計画を阻止しなくちゃいけないんだ。

「………」
「どうかしたかな?」
「……、いいえ」

少し間をおいて、オイラは笑った。と、思う。うまく笑えていたかはわかんないけど。みんなみんな頑張ってる。今はふたりともいないけど、みんなひとりで頑張っているんだ。だからオイラが寂しいなんて思ってちゃいけないんだ。うん。
ぱしん、と両方のほっぺたを叩いて、雑念を振り払う。今は修行に集中、集中。

「ダイヤモンドくん、頬を叩くと眠気が飛んでしまうよ?」
「あっ……」

いけない、これから寝るところだった。
ゲンさんは優しげに微笑んで、オイラの頭を撫でてくれた。オイラよりひとまわりもふたまわりも大きなその手は、この孤島に籠もって暮らしているというだけあって少しごつごつしていて、けれど温かかった。

「おやすみ」

ゲンさんはそういって、オイラの頭から手を離す。オイラもおやすみなさい、と言って、ポケモンバトル練習日記を鞄にしまった。
ゲンさんは日記帳をしばらく見ていたようだったけど、ルカリオが部屋に入ってきたら、すまないと言って一緒に出て行った。
オイラはしばらく、鞄の中の図鑑を眺めた。そっと表面をなでると、真っ赤なそれは機械特有の冷たさをオイラに伝える。
絆を繋ぐもの。
人と人を繋ぐもの。
オイラとパールとお嬢様を繋ぐもの。

「守らなきゃね」

鳴らない図鑑を眺め、呟いた。
そのためにオイラはここに来たんだし、パールもお嬢さまも頑張っているんだから。

「シンオウの未来」

言い聞かせるように放った言葉は転々、床に落ちた。オイラ頑張るよ、まだまだ課題はたくさんあるけれど、きっときっと、きみを守る。エムリット。
ふ、と息をつき、鞄のファスナーを締めると、オイラはゲンさんが寝ているだろうテントへ向かって歩き出した。








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ゲンさんとダイヤくんの
うんぬんかんぬん







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