めいん

□きまぐれヒーロー
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※幼稚園


今日も今日とて賑やかな、同年代のやつらをみやる。こいつらはいつもグループで固まっていて、よくいたずらして先生に怒られてるんだ。ひとり飛び抜けて頭が悪そうなやつがボス、いわゆるがき大将ってやつだ。まわりの子たちは、怖がったり関わりあいになりたくなかったりして、子分のやつら以外このがき大将には近づいたりしない。だいたいは。
オレもそのなかの一人で、多分後者の方の理由で、こいつらには近づきたくなかった。輪になって今日は、なにかいじめてるのかな?最悪なやつらだ、そう思いながら通り過ぎようと足を早めた。が。
(………、?あれ…)
輪の中心でうずくまって、時々やめてよう、と間延びした声を発する、あいつは。まさか。
通り過ぎようとした足は停止して、方向転換。そのまままっすぐに、関わりたくないあいつらにむかって進んでいく。
自分でもびっくりだ。

「おい、やめろよ!!」

初めてやつらに声をかけた気がする、うん、きっとはじめてだ。がき大将がこっちを向く。うわ、喧嘩はやだな。

「なんだよ、おまえ」
「よ、弱いものいじめなんかして、かっこわるいと思わないのかよっ」
「はあ?」

うわあ、語尾が震えてる。かっこわるいのはオレだぜ、まったく。けんか吹っかけられたら負けるのはこっちだ、よし。

「せんせいにいいつけてやるからな!!」
「な、」

がき大将の目を睨みつけて、せいいっぱいの大声で叫ぶ。組織をつぶすにはヘッドからだって、ダディに聞いたことがあった。がき大将とその部下どもは、ちょっとだけ焦りながらいこうぜ、と呟いて去っていく。うん、やっぱりせんせいは偉大だ。
やつらが残らずいなくなったのを確認して、地面に丸まっている親友の背中を軽く叩く。土埃がひどい。

「おい、おいダイヤ、だいじょうぶか」
「……ん〜、だいじょぶ」

彼が少し体を浮かせると、下から小さなコリンクがはい出てきた。親友はコリンクを抱いてにっこり笑うと、オレの前に突き出して言った。

「ほら、けがしてないよ」
「……あのなあ、オレはコリンクじゃなくて、おまえのしんぱい、してんの」
「そうなの?」
「そうなの。あっもうほら、けがしてんじゃん」

すりむいたらしい小さなひざは、土で汚れながらも血がでていて痛そうだった。ぱんぱんと服を払ってやると、もくもくと土が舞った。やっぱりせんせいに言ってやろう。ぜったい言ってやろう。ダイヤがコリンクを地面に下ろすと、コリンクはきゅうと一声鳴いて、夕闇に姿を消した。それにばいばいと手をふる、親友。

「パール」
「なんだよ」
「ありがとう」
「……え」
「たすけてくれたでしょ、うれしかったよ」
「あ、あたりまえだろ、ともだちなんだから」
「うん!」

土で汚れた顔が、夕日に照らされて笑った。オレはなんとなく、そんなダイヤが好きだなあっておもった。パールはすごいね、せいぎのヒーローみたいだ。ふにゃふにゃした笑顔がこっちを向くと、なんだかきゅうっとなって、ダイヤをぎゅっとしたくなるんだ。
オレはなにも答えず、かわりにダイヤの手をぎゅっとすると、ほら帰ろうぜ、といった。ダイヤはまたオレにわらって、うん、と返すと引かれるままにあるきだしたのだった。



正義より君のみかた



(きょうもあしたも)
(きまぐれヒーロー)















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