めいん
□ダイ→嬢→パル→ダイ
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「私、パールが好きです」
はにかみながら、しかし嬉しそうに、彼女は唇から言葉を紡ぐ。その瞬間、すべてが決着したように思えた。
(振られ、ちゃった)
悲しいかな、自分の気持ちを伝える前に見事終わってしまうとは。それなのに思った程自分の心が荒れる事なんてなくて、オイラは心底驚きつつ「そっか」、と返してみた。
「お嬢さまなら、ぜったいにだいじょうぶだよ」
「ほんとですか?ありがとうございます」
やっぱりダイヤモンドに相談して良かったです。そう笑った彼女は実に嬉しそうで、きらきらと輝いていた。ずるい、と思った。オイラはお嬢さまの事が大好きだったけれど、きっとパールもお嬢さまが好きだと思う。うまくいくよね。
だいすきなきみが、だいすきなあのこが、わらっていられるのなら、いいと思ったんだ。
「なぁ、おまえ、最近オレのこと避けてないか」
「え?」
唐突に言われた台詞に、素っ頓狂な声を発してしまう。今ここに、お嬢さまは、いない。まずい。
でも、そんなに避けている自覚は無いんだけどなぁ。漫才の練習だってポケモンバトルだって、逃げないでちゃんとやってる。
「そんなことないよ?」
「いや、ある!!お前さ、最近やたらとお嬢さんと一緒に居させたがるよな、オレを」
「えっ!えっ……と、あの、それはー……そのー……」
なんでこういう時に限っていやに鋭いんだろうパールは。オイラが何も答えずあー、とかうー、とか言っていると、せっかちな相方はいらいらとこちらを睨んできた。
「なんか隠してるだろ」
「隠してなんか」
「目が泳いでる」
「ぱッ……パールが気にする事じゃあ、ないよ」
「ッ、気にする!!」
途端、大きな声で怒鳴られて、びくりと肩を震わせる。み、…耳が。パールはハッと我に返ったようで、ごめん、と申し訳なさそうに謝ってくれた。特に怒ってるわけじゃあ、ないから大丈夫なんだけれど。なに。なんだろう、この空気。
「……あのさ、この際だから言うけど」
「…? なに、を」
こわい。こわい、こわい。やめてやめて聞きたくない。どうかどうか、杞憂であって。
「オレ、お前がす―…」
ぱん。
と、気づいた時には全力で、彼の口を塞いでいた。いきなりのばした腕がじんじんと痛くて、塞いだ手の平にかかる温かい息に、涙が出そうになった。出かかった言葉を飲み込むように、パールの目が見開かれる。オイラはその橙の眼を視界に入れることができなくて、パールの口を塞いだまま、俯いた。
「……ッ、ずるい」
「………」
ずるい、ずるい。
お嬢さまも、パールも。そして、オイラも。狡い。
「…、狡い、よ」
ねえなんで。
なんでみんな、幸せになれないの。
これは誰の悪戯なの。
何も言えなかったパールはオイラと似ているようで、それでもオイラとは違うようで。ゆっくり手を下ろして、ごめんね、と言っても、パールは何も言わなかった。
ムゲンループ
(終わりがみえない)
(どうにもできない)
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一方通行
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