めいん

□ダイヤとプラチナ
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こんなに月が蒼い夜は
不思議な事がおきるよ






「ダイヤモンド、そんなところにいると風邪をひきますよ」
「わ、お嬢さま」

ぴかぴかひかる満天の星空。手をのばしたら届きそうだ。星は配置を換えて春の訪れを告げるそう。それでもシンオウの空気はまだ冷たくて、お嬢さまの言ったように、へたをしたら風邪をひいてしまいそう。現にいま、気持ちとは裏腹にくっしゅんとくしゃみをしてしまった。

「ほら」
「うー、ほんとだー」

何故か楽しそうに笑うお嬢さまから、外していたマフラーを受けとった。首に巻くとほかほかと暖かく、真っ赤なマフラーも楽しそうに揺れた。
いつも何かと世話をやいてくれるせっかちな相方は、今はホテルの浴室内でお風呂中。だいたいはパールが先にお風呂にはいるのだ。お嬢さまは基本的に、オイラたちとは違う部屋に泊まるけれど、こうして寝るまでの数時間かは一緒にいることが多い。真っ暗なベランダはスイートルームの大きなガラス戸から漏れる明かりに照らされて、ほのかなオレンジ色に輝いていた。今はそこにお嬢さまと、ふたりきり。
キラキラひかる星と、ぽっかりと浮かぶ青い月。あんまりみたことない青白い光だけど、それを見ているとなんだか、不思議な気分になる。

「ねぇ、ねぇお嬢さま」
「なんですかダイヤモンド?」
「リッシ湖でオイラが話したこと、覚えてる?」
「パールにも話していない、あの光のことですか?」
「そう」

先にお風呂に入っていたお嬢さまは、まだ髪が濡れていて、このままじゃ湯冷めしてしまうんじゃないかって心配になった。
あ、でもやっぱり、綺麗な髪だよね。お嬢さまの凛とした瞳は、まるであの日あの光と会った、シンジ湖のよう。きらりと揺れて、またたゆたう。

「オイラ、なんだかまた、あの光に会えそうな気がする」
「ほう」
「なんだか、すぐに、会えそうな。そんな気が、するんだ」
「…ダイヤモンド」
「つき、きれーだね」

お嬢さまは何か言いたそうにしていたけれど、オイラが笑いかけると、そうですね、とちょっとだけ笑って、それ以上は何も言わなかった。

「ふぃーっ!いいお湯だった〜!ダイヤ、次だぞー」
「あっ、はぁーい!」

パールがタオルで髪を拭きながら歩いてくる。いつも跳ねている蜂蜜色は、今だけへんなりと水を滴らせていた。パールはもとからくせっ毛だし、もう少ししたらいつものように跳ねると思う。故に、この瞬間は、貴重だ。
オイラは鞄から着替えを取り出すと、抱えて立ち上がる。浴室の扉まで歩くと、後ろからてくてくとべーがついて来た。あ、と思ってドアの前で立ち止まり、ベランダの方へ向く。

「お嬢さま、湯冷めするよ」
「えっ…ああ、はい」
「あ、ほんとだ。お嬢さん、なんか羽織ってないと、風邪ひくぞ」
「ありがとうございます」

パールがお嬢さまに上着をかけてあげるのを見届けてから、オイラは安心して浴室の扉を開けた。








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連載しようと思っていたもの。






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