めいん
□恋をしていますありがとう!
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冬がすきだと、相方は言った。
「雪がふると、なんだか嬉しいんだ」
そうかなぁ。冬、寒いじゃんか。俺は夏の方がいっぱい動けてすきかな。
「パールはわかんないの、冬の良さが?」
えー…うーん、なんだろう。こたつ?
俺が答えると、赤いマフラーを揺らして、ダイヤは笑った。あはは。その柔らかい声と一緒に、軽く開いたくちびるから、真っ白な息が漏れる。
降雪まで、秒読みかな。
「オイラもこたつは大好きだよ、暖かいもんね!みかんもあれば最高だなぁ」
ああ、みかん。やっぱりなぁ。どうせお前は肉まんがおいしい季節だからとか、白菜のお鍋が食べられるからだとか、そういうことなんじゃねえの。冬が好きな理由。
「それもあるんだけど、ねぇ、パール、夢がないよ」
夢。
赤くなった鼻までマフラーを上げて、ダイヤは言った。どんよりとした鉛色の空の下、彼の赤いマフラーがどこまでも眩しい。鞄を肩にかけ直して、ダイヤはポケットから手を出した。
「冬は好きだよ」
もう一度、言った。だって。
「パールと手を繋げるから」
ぎゅっと、ダイヤは俺の手を握る。ポケットに入れていた甲斐あってか、その手は俺のより温かかった。なるほど。
別に冬じゃなくったって。そう言ってやると、ダイヤは赤くなった頬を緩めたまま言った。
「よく言うよ、暑いからって嫌がる癖に」
寒い寒い、今だからこそ言えるんだ、夏でもいいだなんて。
一方的に握られた手をやんわりほどき、するりと回転させる。びっくりしているダイヤの指の間に自分の指を、絡ませてみた。いわゆる、恋人繋ぎ、だ。
「パール、指つめたいよぅ」
嬉しそうに不平を漏らす相方に、お前はあったかいなぁと言葉をはいてみる。冬の鉛色に、二人分の白い息が浮かんだ。ぷわわ。急に吹いた北風が、それを掻き消して、さらっていく。
「あ!」
繋いだ手を揺らしながら、ダイヤが声をあげた。なに、と言おうとした途端、目の前を小さな白色が、ふわりと舞った。
う、わ。
降るだろう、とは思っていたけれど、まさか。
「雪だ〜!」
目を輝かせてダイヤが叫ぶ。シンオウでは珍しい事じゃないだろうに。それでも雪が嬉しいんだ、きっと。
秒読みじゃ、なかったけど。
「みてみて、パール!綺麗だよ」
ダイヤのわらった顔がやわらかくてあたたかくって。繋いだ手にダイヤの体温が流れ込んで。ほら、きみといたらこんなにすてき。
「なぁ、ダイヤ」
「なに、パール」
だからきみを、オレはすきになったんだとおもったよ。
「12月24日、空いてないかな?」
恋をしています
ありがとう!
(すてきなイヴを)
(願わくば君と!)
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title by 「確かに恋だった」
ひと足早い雪模様
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