めいん
□パル←ダイ
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きみのまっすぐなその目が、とても好きで、同時に、とても恐ろしかった。射止められたら絶対に頷いてしまうと、直感的にわかっていたのだから。
幼なじみで相方で、ちょっとだけ強引なきみが大好きで。それから、そんな想いを持つ自分がはずかしくてこわかった。いつ知られてしまうだろう、いつ言ってしまうだろう、いつ自分が抑えられなくなるだろう。きみをすきになった自分は社会不適合者だった。こんな恋愛は禁忌だ。
知られなければいいだろうか、わからなければいいだろうか。これ以上を望まず、温い「親友」の関係を保っていれば、あるいは幸せだろうか。
嘘をつくのは得意だった。
勘違いの旅だって、自分が全部知っていたこと、だれもわからなかった。
嘘をつくのは得意だ。
「パール」
「んー?」
「パール、パール」
「なんだよダイヤ」
無性にきみの名前を呼びたくなる。声が聞きたくなる。それが恋情からくるものだと知っているのに。苦しいだけなのに。
きみに名前を呼んでもらえれば、もう満足だよ。それ以上はいらないじゃないか。そう思ってしまうのは、おいらが臆病だからなの?
「…なんでもないよ」
「なんだそれ」
優しい蜂蜜色の髪がゆれるたび、どきどきして、目を背けたくなる。声が耳をかすめて、どうしようもなく手を握りたくなる。言ってはだめだ。壊してはだめだ。中途半端な、ぬるい選択。
「なんか元気ないな」
「え」
「おなか空いた?」
「…ううん」
「そっか。…なんかしあわせが足りないって顔してるけど」
しあわせだよ。
きみとこの距離を保っていられたら、たぶん、きっと。
それでも、それでも、しあわせなんだ。
「そんなことないよ。しあわせだよ」
しあわせなんだよ。
「それならいいけど。…なんかあったら言えよ」
「パールで頼りになるかな」
「失礼な」
笑うのは得意だ。きみの前ならなおさら。それでもきみがおいらのことを気にかけてくれたのが嬉しくて、苦くて。この位置が、きっと最良なんだ。きみの最高の友達でいること、こそが。きみもおいらも、傷付かなくていい位置なんだよね。
だからおねがい
もうこれいじょう
すきにさせないでよ
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踏み出すのがこわいダイヤ
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