Novel

□好きじゃない!
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俺はお前のこと好きじゃない!










「好き」



目の前に座るこいつは平然とそう言った。


お前は頭おかしいのか、と心の中で毒づくが、混乱して言葉にできない。



何なんだこいつ、それを聞いて俺にいったいどうしろというんだ。



前に座るこいつ、赤い髪の元宇宙人サンは俺から視線を外そうとしない。

いつも胡散臭い笑いが今日は気持ち悪くも感じる。



微妙な沈黙が気持ち悪くてつい悪態をついてしまう。




「……男に好きとか気持ちわりぃ」




俺はお前嫌いだ、と付け足す。



だが基山は何も言わず笑ったままだ。


ああ、クソっ何だってんだよ!



幸い周囲はそれぞれに騒いでいるから聞こえてないのだろう。


こうなったらおもいっきりまくし立ててやろうか。

そう思い、口を開こうとした瞬間だった。




口に。




「(なんだ、これ)」




柔らかいもの。



口に触れる柔らかい感触に思考回路がフリーズする。

わけがわからない。なんで。



頭の中で自問自答を繰り返すうちに、やつは唇を離し笑った。




「嫌がらないのは俺のこと嫌いじゃないから、でいいかな?」




んな訳ねぇだろ、と心中で呟く。

一発殴ってやりたいと思いつつも体はフリーズしたまま動かない。



なんでこんなことになった。



ろくに回らない頭でぐるぐると考えていたら、基山が繰り返すように言ったから条件反射で返した。




「好きだよ」



「俺はテメェのことがだいっきらいだ!」









延々と繰り返されるこの応答。


誰も気にしない、



(だっておもしろいからね)



(ねぇ風丸くん。あの二人くっつくかな)(俺に聞くなよ!)












俺は赤い元宇宙人が好きじゃない!


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