□お疲れ様
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【お疲れ様】
過密なスケジュールの時は多々ある。
"休日"には、自主トレとしてダンスや歌の練習をする日はよくあって。
たまの"休み"にはマネ-ジャ-やスタッフなど、ヒョンたちの結婚式に呼ばれる日々。
忙しさにかまけて、眠るのはもっぱら飛行機の中。
機内はいい。
12時間拘束されれば、その半分以上は睡眠時間だ。
薄い空気の中で見る浅い夢は君の夢ばかりで。
俺はまた愛しさに熱をぶり返して目を覚ます。
掛けられたブランケットを剥ぎ取り飛行機を降りて、俺はまた携帯を確認する。
ジョンヒョン「・・・・・着信はなし、か」
あたりまえのように電話やメールはなくて。
俺はその何もない画面をみつめたまま、
「着いたよ」とか「今ついたから…」とか、さしあたって大して変わらない一文を、何度も消したり書いたりして・・・
しまいには書くのをやめて携帯をポケットに戻す。
ほんとうはさみしいよ、と一言いえればらくなのかもしれないが、
男が仕事をするのは当たり前なので。二十歳を過ぎた辺りからだんだんと言えなくなっていた。
大人はこうしていえない事が増えていくんだろう。
そうしていつの間にか雁字搦めになって、
君との愛を見失う日が来るのかもしれない。
そうなったら
いやだな、と思って。
俺は携帯をもう一度取り出し、書きかけのまま保存していた「今ついたよ」という短い一文を、君に贈った。
君からはすぐに、短い一文が返ってきた。
『お疲れ様』
その魔法のような言葉にほだされて俺はまた今日もがんばれる。
男ってのは単純な生き物なんだ。
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